かつてないほど高い米中間の緊張
筆者は現在、米国の首都ワシントンDCに所在するジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院(SAIS)博士課程に在籍している。同大学院は、国際政治・安全保障・経済の分野で世界屈指の教育・研究機関と評されており、歴代の米国政府高官や外交官を多数輩出してきた名門である。
また、筆者の主な研究分野は東アジア安全保障、台湾海峡危機管理、防衛産業政策である。具体的には、米中戦略競争下における台湾・日本の安全保障政策、地域の防衛産業、地域外交の地政学的意義などについての論文を主に英語で執筆している。
博士課程進学以前は、戦略コンサルティングファームに5年半在籍し、防衛産業・安全保障政策分野に携わり、政府機関や研究機関と協働して政策分析・装備調達・国際協力に関する実務に従事した経験を有している。こうした実務経験に基づき、学術研究と政策分析の双方から、東アジアの安全保障を総合的に分析している。
台湾は「最も危険な潜在的火種」
理論と現場、そして米国、日本、中国、台湾を行き来するなかで、筆者はこの数年、世界が不安定化していくのを肌で感じてきた。ロシアによるウクライナ侵攻は、一方的な力による現状変更が再び大国の対外政策の選択肢となりうることを世界に思い出させた。中東では、パレスチナ・ガザをめぐる紛争が再燃し、現在はイスラエル政府とハマスの間で和平が成立しているものの、国際社会の分断を一層深めている。
そして、何より米中の対立はもはや一時的な現象ではなく、国際秩序そのものの構造変化を示している。台湾海峡や南シナ海、そして沖縄や日本列島にまでその緊張の波が押し寄せている。
米中が衝突するのであれば、その火種は台湾であると言っても過言ではない。
実際に、多くのアナリストや当局者は、台湾をめぐる紛争の可能性が高まっていると警告している。米国のカーネギー国際平和財団の最近の研究では、台湾を米中関係における「最も危険な潜在的火種」とし、米国、中国、台湾の関係は、現在「少なくとも1970年代以来、最も紛争に近づいている」と指摘している。
