光秀は“ワンマン社長に振り回される幹部”

光秀が何か言えば、こう返ってくる。

「光秀、お前は甘い」
「これが乱世だろう。綺麗事を言ってる場合か」
「結果を出してる俺たちが正しいんだよ。文句があるなら出ていけ」

これ、ブラック企業でワンマン社長に振り回され、追い込まれる幹部そのものではないか。

「売上目標は達成しろ。でも予算は削る。人も増やさない。コンプライアンスは守れ。どうやるかは現場で考えろ」

光秀は気づいた。このまま信長についていけば、自分も「詐力」の片棒を担がされ続ける。

……いや、もうこの会社、完全にヤバいだろ。

周りを見渡せば、状況はさらに深刻だった。

秀吉なんて、もう完全に信長イズムにノリノリである。「社長、こうしましょう!」と、次々と「合理的な施策」を提案する。その中身は、光秀から見れば明らかにアウトだ。いや、これ後で絶対に告発されるだろ! と思うような案件を、秀吉は平気で処理している。

「いやいや、これマズくないですか?」と光秀が指摘しても、秀吉はこう返す。

「光秀さん、考えすぎですよ。社長が認めてるんだから問題ないでしょ」
「結果出してるんだから、細かいこと気にしてたら勝てないですよ」
「うちのやり方についてこれないなら、無理しなくていいんじゃないですか?」

もう、話にならない。

明智光秀画像(本徳寺蔵)
明智光秀画像(本徳寺蔵)(写真=Gameposo/朝日新聞デジタルの関連サイト/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

歴史では“裏切り者”だが、現代なら“内部告発者”

さらに悪いことに、信長は秀吉のような「ノリノリで突っ走るタイプ」を高く評価している。光秀が慎重に進言しても「お前は臆病だ」と一蹴され、秀吉の無茶な提案は「さすが秀吉、よくやった」と褒められる。

組織内での力関係も逆転し始めていた。かつては光秀の方が上だったのに、今や秀吉の方が信長に近い。このままでは、自分が追い出されるのも時間の問題だ。いや、追い出されるだけならまだいい。最悪の場合、「共犯者」として全責任を押し付けられる。

このまま信長が暴走を続ければ、組織全体が破綻する。その時、誰が責任を取らされる? 間違いなく、自分のような「古参の幹部」だ。秀吉のような新参者は、うまく逃げるだろう。もう、このままでは終わらせられない。

歴史は光秀を「裏切り者」として記録した。だが、現代の企業不祥事の文脈で見れば、彼は「内部告発者」だったとも言える。

……もし信長が現代に生まれていたら、どうなっていただろうか。

おそらく、グレーゾーンを突いたスタートアップで急成長し、一時はメディアに「革新的起業家」ともてはやされる。だが、規制が追いつき、内部告発が相次ぎ、最終的には出資法違反か金商法違反で実刑判決……そんなシナリオが見える。

出獄後は、YouTubeチャンネルを開設。そこで、毎回こう語るのだ。

「ワシみたいになったらいかんて。マジだで」

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