「時間アセスメント」と「時間指標」
第三に、ケア時間がある。これは、家族やコミュニティ、あるいは自己ケアに十分な時間を割けているかに関わる要素だ。ケアは往々にして生産物を生み出さないものであり、価値のない時間だとみなされがちだが、ケア時間こそが人間の暮らしの土台である。これを奪われるとウェルビーイングへの大きな打撃となる。
実際にこうした時間のケイパビリティアプローチを測る指標を用いて、〈いい時間〉を作るために、どんな具体的な指標が考えられるだろうか。
第一に、「時間アセスメント」(時間評価)をプロジェクトや締め切り策定の際に使用することが考えられる。たとえば、このプロジェクトでは週何時間までなら他の時間を圧迫しないか、参加メンバーで確認したり、どの程度のケア時間を確保しうるかを事前に交渉・設定しておくのだ。
第二に、企業や団体に、時間ケイパビリティ指標を用いた企業評価を適用できるだろう。「経済指標」だけでなく「時間指標」を加えるのである。これは、労働時間だけではなく、その時間のなかでどれくらい自由度があるか、企業が保育や介護への支援をすることでどれほどケア時間をサポートしてくれるのかを評価するものだ。
コメントby SERENDIP
行動経済学では、個人の利益を最大限に引き出せるよう合理的な行動をする「ホモ・エコノミクス(経済人)」というモデルを前提とする従来の経済学に対し、人間はその場の感情や心理に左右され必ずしも合理的には行動しないことを想定する。また『数理モデルはなぜ現実世界(リアルワールド)を語れないのか』(エリカ・トンプソン著、白揚社)では、関連の薄い側面などを削ぎ落とす数理モデルが現実と乖離してしまうことを論じている。
さらに言えば、アフリカ大陸などで人工的に引かれた国境線がさまざまな歪みを生じさせている現象がある。「時計時間」はこれらと同様に、人間や世界の真実とは異なるものなのだろう。複雑さや曖昧さをそのまま受け入れた上で人間や社会の姿を考えることが、現代においてはきわめて重要といえるのかもしれない。
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