世界が驚いた露骨すぎる粛清
こうなると、習近平は2027年党大会まで政治生命を維持できるのか。総書記と軍委員会主任を誰かに譲って国家主席にだけしがみつく寡頭政治に移行するか、あるいは軍の反乱があるのか。いや、その前に民衆の暴動の拡大が起こりそこで軍が動かなかったら、どうなるのか?
そういう状況下であったが、1月24日、国防部は突然「張又侠と劉振立(統合参謀長)を『取り調べ中』だ」と発表し、世界に衝撃を与えた。
軍の制服組トップを失脚した張又侠は習近平と同じく太子党、紅二代だが、若き日にベトナム戦争従軍の実戦経験があった。
かくして独裁政権を支える軍事委員会に習近平を支持する軍人は不在となった。軍の指揮系統は形式的に習近平に一本化するが、制服組軍人は心から信服しているわけではない。
統合参謀長の劉も不在となって、誰が部隊に動員命をくだすのか。軍事委員会トップふたりの失脚は“第2の林彪事件”と騒がれているが、中国軍はしばし機能不全の状態となるだろう。
反体制派に相次ぐ不審死
こうした泥沼の権力闘争は、過去数年にわたって水面下で続いていた。
周洪許は北部戦区陸軍副参謀長(少将)になる前、2008年の四川省地震のときは救援活動を指揮した。その前は雲南省のジャングル地域の駐屯兵だった。この周洪許が、2021年に北京防衛、とりわけ中南海を警護する「警備局長」に大抜擢され話題を呼んだ。
そして2025年12月、周は中央軍事委員弁公室主任となった。張又侠の首席補佐官のようなポストだが、華字紙消息筋は「周は習近平を裏切り、張に寝返った」と騒いだ。
王小洪が公安部長に抜擢されたのも習近平の手引きである。王小洪の就任直後から地方幹部たちの奇妙な自殺が続いた。そして反習近平派が立て続けに表舞台から消えた。
河北省の副省長(副知事に相当)と公安庁長(警察本部長に相当)を兼ねた劉文璽、甘粛省党委員会の周偉秘書長、遼寧省大連市副市長の曽兵が突然死んだ。天津市では廖国勲市長(閣僚級)が急死。その他、上記の劉氏の上司にあたる河北省党政法委の趙革書記死亡説も流れた。
対米交渉では王小洪がフェンタニル問題を交渉の切り札として登場し、場違いの経済貿易交渉の場に参加したことは注目を集めた。習近平の外交戦略の一端を担って、最も信頼されていたのだ。
