免疫系に異常をきたす原因に

一方、対照ラットは2週間経っても健康でした。断眠すると免疫系がダメージを受けるようなのです。彼らは、この実験装置を使ったラットの断眠実験の結果を、1989年にSleepという睡眠研究専門の雑誌に、何と10報の連続論文として発表しています。

では、いったい断眠によってからだの中で何が起こったのでしょうか。レヒトシャッフェン博士らの研究で、ラットは代謝機能の変化から、内分泌系の異常、さらに引き続いて起きる免疫系の異常が最終的には死因につながったと考えられます。

また、2023年に中国のグループは、別の装置を工夫して、マウスの断眠実験を行いました。彼らの実験では、動く台ではなく、水を薄く張った飼育容器の中に、マウスがようやく立てる広さの小さな台を置きました。マウスはこの台の上で寝てしまうと落ちてしまいますし、水の中で寝てしまうと、鼻が水につくので、長く眠れません。このようにして、96%以上の時間覚醒するようにして、強く断眠すると、サイトカインストームという状態が起きて、4日目までに80%が死亡するという驚きの結果を報告しています。これは断眠が強いストレスとなって、免疫系に異常をきたすことを示します。

ハエも寝不足でDNAが損傷した

また、ハーバード大学メディカルスクールのヴァカロ博士らがハエとマウスを用いて断眠の影響を探った2020年の研究によると、眠らせないとハエもマウスも腸内に活性酸素が蓄積することで腸内細菌そうに変化が起こりDNAの損傷や細胞死といった酸化ストレスが引き起こされて死んでしまったそうです。活性酸素を消去するような抗酸化化合物を投与することによって活性酸素の蓄積を防ぐと、断眠をしても長期間生存できると報告しました。

乳酸菌の3Dイメージ
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眠らないと死んでしまうというのは極端な例ですが、私たちも徹夜をしたり、睡眠時間が短い日が続いたりすると、まず注意力や記憶力が低下します。仕事の効率が下がり、事故も増えます。また寝不足が続くとキレやすくなる、と言われますよね。眠気があると通常よりイライラしがちというのは、だれもが経験したことがあるのではないでしょうか。これをより科学的に調べた興味深い研究があるのでご紹介しましょう。