檀家制度は機能不全、死を待つ「ゆで蛙」状態

宗門人別帳で幕府の役割を補完し、子供の遊び場にして大人の寄り合い所、寺子屋という教育機関にして葬儀と法事を取り仕切る寺は、地域コミュニティの中核だった。同時に江戸時代の先祖と親を敬う儒教教育は縦社会の秩序を築き、明治時代の天皇による万世一系支配と明治民法下の家制度によってさらに強化され、その象徴が「○△」家の家墓だった。

伊藤博敏『火葬秘史 骨になるまで』(小学館)
伊藤博敏『火葬秘史 骨になるまで』(小学館)

戦後は寺の持っていた優先的な立ち位置がすべて揺らぐ。檀家制度と家制度はしだいに機能しなくなり、血縁、地縁は薄れて墓は継承されなくなった。写経教室、座禅会、子供食堂といった活動を通じて地域コミュニティに欠かせない寺があり、宗教者として貧困や落ちこぼれといった社会問題に取り組む僧侶はいるものの、大半は葬式仏教に安住して存在感は高まらず、「寺院消滅」に歯止めをかけるには至らない。

「お寺を支えるシステム」が崩壊していく中、13宗ある日本の仏教宗派の枠組みに大きな変化はない。主要宗派が属する全日本仏教会が何らかの指針を打ち出すこともなければ、各宗派の門主、管長といったトップの声が信徒に伝わることもない。

むろん痩せ細る現状に危機感はあるのだろうが、「本山」と呼ばれる大きな寺が、小さな寺を「末寺」として支配下に置く「本山・末寺」の関係の中、末寺からの上納金で運営される本山宗務総長ら運営幹部は、改革を嫌う保守思想のまま、熱湯死を待つ“ゆで蛙”状態にある。

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