ほとんどが年収300万円以下の厳しい経営

2024年1月、梶龍輔・駒澤大学非常勤講師は、2022年までの40年間の曹洞宗、浄土真宗本願寺派(約8900カ寺)、日蓮宗(約5000カ寺)における合併・解散で廃寺となった寺院を調査分析し、3宗派合わせて703カ寺が廃寺となり、増加のスピードが上がっていると発表した。宗教法人の約63%が年収300万円以下。全国に約1万の寺を持つ浄土真宗本願寺派もその4割が、年収300万円以下だという調査もある。

背景にあるのは一日葬や直葬、家族葬の普及に伴う葬儀の簡素化と、それに連動した戒名料などお布施の減少、法事の縮小だ。樹木葬、合葬墓、散骨など「継承しない葬法」の普及は大きな影響を与えている。墓は継承されなくとも葬儀は行われる。だが、「継承されない墓」は前提として檀家にはならないことが多く、従って法事もない。

京都市千音寺の中で早朝に祈る僧侶たち
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地域コミュニティセンターとしての役割は失われつつある

江戸時代の檀家制度は、檀家(信徒)がキリスト教徒ではないことを寺が証明する「宗門人別帳」によって、檀家と寺が互恵関係で結ばれていた。それが寺の安定につながって堕落した側面はあるが、一方で、寺は江戸時代に地域コミュニティセンターとして重要な役割を果たしてきた。

18世紀末の産業革命を経てイギリスには多くの工業都市が生まれ、鎖国日本の先を行く近代国家だったが、就学率は2割程度で労働者の識字率はそれ以下だったという。フランス、ロシアといったヨーロッパの他の大国も同じようなものだった。ところが日本では、武家のような支配階級だけでなく庶民も寺子屋に通い、幕末の就学率は7割を超えた。

武家階級は文武両道を求められて藩校に通い、素養として儒学を中心に学び、中でも朱子学が重んじられた。「君は君たり、臣は臣たり」という言葉で知られる朱子学は、立場に応じて立派に生きるようにという心構えを説き、封建制度の中の規範として長けており、論語を含む四書五経などで藩士の子弟らは学んだ。

庶民が通った寺子屋は、その名の通り、寺院が一角を貸し出し、僧侶や神官、医師などが町民や農民の子弟を教えた。読み(読書)、書き(習字)、そろばん(算数)が中心で、生きていくための最低限の素養が備わった。初級教科書として使われた『庭訓往来』は、普遍的な社会常識を伝え、親孝行や長幼の序が教え込まれた。