社長を装ったメールやチャットで現金を騙し取る詐欺が多発している。ITジャーナリストの鈴木朋子さんは「緊急の業務として社員を騙す手口で、被害額も大きい。また、新たなパターンとして、ニセ社長詐欺の注意喚起を装ってマルウェアを配布するメールも登場している」という――。

突然、社長から「LINEグループを作成して」

「会社のLINEグループを作成して」――社長を装った何者かに業務命令を受け、指定口座に送金させられる詐欺被害が昨年末から多発している。長野県では飯田市の会社が2950万円、岐阜県では多治見市の会社が1億円の被害に遭うなど被害額も大きく、今年に入っても詐欺被害は続いている。

手口はこうだ。社長などの代表者から企業に対してメールが送られてくる。内容としては、会社のLINEグループを作成し、そのQRコードを送れという業務指示が含まれている。

以下は、実際に送られてきたメールだ。

「会社のLINEグループを先に作成してください。当面は、他のメンバーは招待しなくて構いません。参加後は、職称と氏名が分かるように表示名を設定してください。設定が完了したら、グループのQRコードをメールで送付してください。続いて、作業指示を出します」

実際に送られてきたニセ社長詐欺メール
筆者提供
実際に送られてきたニセ社長詐欺メール

「社長の個人アドレス?」と勘違い

筆者の元に寄せられた複数の事例では、少しずつ文章は異なるものの、最も多いパターンは上記画像のような文章だ。

ほかにも、「今、会社(オフィス)にいますか?」や「今、会社にいる? 読んだら返信して」など、一文のみのパターンもある。また、文章を画像として送信してきたケースもある。迷惑メールに判別されないように工夫したのかもしれない。実際にメールソフトの迷惑メールフィルターに検出されたケースもあるが、すり抜けて社員に到達してしまうこともある。

そのほか、従業員リストを送るように求めたり、Microsoft Teamsのアカウントとパスワードを送るよう指示されるパターンも存在する。ところどころ中国語系と思われるフォントが使われていることもある。

いずれのケースも会社や社長の名前を名乗ってはいるが、outlook.com、gmail.comなどのフリーメールから送られてくる。プライベートで使っているメールアドレスと勘違いする社員も多いだろう。宛先は「info@」や「support@」など、大抵の企業が使っているユーザー名に会社のドメインを付けたメールアドレスに送信されることが多いが、どこかから入手したと思われる個人のメールアドレスにも送られてくる。