(時事通信フォト=写真)

さて、言うまでもないことだが、アメリカにとって日本は最大の同盟国である。日本が原発事故によって電力供給に不安を抱える状況にあり、しかもアメリカ産LNGの9倍もの価格の中東産LNGを輸入しているのだから、少しぐらい安いLNGを回してくれてもよさそうなものである。しかしいま現在、そうした流れにはなっていない。輸出のための液化基地がまだ十分でないということもあるが、さらには、アメリカにとってLNGは戦略物資だからである。アメリカはFTAやTPPに加盟しない国にはLNGを輸出させないと言明している。つまり、安いLNGが欲しかったらTPPに加盟せよということである。

日米のLNGの異常な価格差の背後には、こうしたアメリカの思惑も働いている。そして、思惑はそれに留まらない。

もしも、日本が安価なLNGを輸入することができるようになれば、CO2の問題はさておいて、火力発電のコストの問題はひとまず解決できる。原発を再稼働させなくても電気料金の値上げなしに電力不足を乗り越えることができれば、日本の世論は原発全廃の方向に大きく傾く可能性があるだろう。反対に、電気料金が大幅に値上げされれば、やはり原発を再稼働させるべきだという主張が幅を利かせる可能性が高くなるはずである。

つまり、原発の存廃はLNGの価格によって大きく左右される可能性もあるのだが、いま見てきた通り、LNGの価格の動向はアメリカの思惑にかかっている部分が少なくない。そして忘れてはならないのが、オバマ政権は原発推進派であるということなのである。日本政府も電力会社もこれに便乗しているきらいがあるとも言える。LNGの価格は、TPPと原発という2つの変数によって動いていくことになる。

小宮一慶●1957年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。米国ダートマス大学エイモスタック経営大学院留学(MBA)。96年小宮コンサルタンツを設立。著書に『1番わかる!ロジカルシンキング』(PHPビジネス新書)、『ビジネスマンのための「数字力」養成講座 』(ディスカヴァー携書)など多数。
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(構成=山田清機 写真=時事通信フォト)