小宮一慶が出題、あなたは何問答えられるか──数字に対するセンスを磨くことはいまやサラリーマンにとって必須の条件だ。それは、経済成長が頭打ちとなったこととも無縁ではない。お金や予算の伸びが限られているなか、買うべきか、買わざるべきか。投資すべきか、やめるべきか。そして日本経済はどこへ向かうのか。7つの問題を考えることによりあなたの数字センスをアップさせよう。
天然ガスの値段、日本はアメリカの9倍
いま、日本の貿易赤字が急激に拡大していることはご存じだと思うが、では、その原因をご存じだろうか。
11年度の日本の貿易赤字は4兆4000億円だったが、実はその大きな原因のひとつがLNG(液化天然ガス)の輸入増加であった。輸入物価の上昇とLNGの輸入の急増というふたつの要因によって、2011年の日本の貿易赤字は急激に膨らんだのである。
なぜいまLNGなのかといえば、日本の火力発電所の約7割がLNGを使っており、しかも福島第一原発の事故以降、火力発電所がフル稼働をしているからだ。そして、発電コストの安い原発を停止して、それより発電コストの高い火力発電所を稼働させるためにLNGの輸入を急増させたのだから、電気料金を値上げせざるをえない。これが電力各社のロジックである。
ところが、数字をよく知っていると面白いことが見えてくる。このロジックの背後にうごめいているさまざまな「思惑」の存在が見えてくるのである。
あまり知られていないことだと思うが、日本が契約している中東産LNGの価格は、100万BTU=約16ドル(2012年)。さらに18ドル程度まで値上がりすると言われていた。なぜかといえば、100万BTUのLNGは熱量換算すると、ほぼ6分の1バレルの原油に相当するからだ。2012年の原油価格は1バレル110ドル前後だから、これを6で割ると約18ドルになる。つまり、原油価格を基準に考えた場合、100万BTUは18ドルが適正価格であるという理屈が成り立つわけだ。
ところが、である。アメリカが使っているLNGの価格は100万BTU当たりたったの2ドル前後、日本が中東から買っているLNGの実に9分の1の値段なのである。なぜこれほど価格に大きな違いがあるかというと、これまで採取できなかったシェールガス(頁岩層に存在するガス)を掘削する技術が開発されたからである。アメリカのシェールガスの埋蔵量は、実に200年分もあるといわれており、それゆえ100万BTU=約2ドルという低価格が実現されているわけだ。