小宮一慶が出題、あなたは何問答えられるか──数字に対するセンスを磨くことはいまやサラリーマンにとって必須の条件だ。それは、経済成長が頭打ちとなったこととも無縁ではない。お金や予算の伸びが限られているなか、買うべきか、買わざるべきか。投資すべきか、やめるべきか。そして日本経済はどこへ向かうのか。7つの問題を考えることによりあなたの数字センスをアップさせよう。
心配性の日本人はたとえ利回りは低くても安全性の高い銀行に預金をしたがるが、冒険心に溢れたアメリカ人は株式や投資信託を買って積極的に資産を増やしている。日本人もアメリカ人を見習ってもっと株や投信をやるべきだ……。
証券会社の宣伝文句だというと角が立つかもしれないが、これは日本人の共通認識であると言っても過言ではないだろう。運用に保守的な日本人は貯蓄をしたがり、積極的にリスクをとるアメリカ人は株式投資をしたがるものである。こんな指摘を受けると、なんだか株をやらないと格好が悪いような気分になるものである。
ところが、ほんの少し実際の数字を調べてみると、必ずしも日本人が農耕民族的に手堅く預貯金に勤しみ、アメリカ人が狩猟民族的に大胆に資産運用をしているわけではないことがわかってくる。
少し前の数字になるが、アメリカの株式の50%を持っているのはアメリカのお金持ちの上位1%であり、実に上位5%が全株式の80%を所有しているのである。アメリカの個人金融資産の約50%が株や投資信託であることは事実(日本は約11%)だが、その大半はごく一部のお金持ちが持っているのが実態なのだ。つまり、アメリカ人全員が株をやっているわけではないのだ。
さらに言えば、1株でも株を持っている人の割合は、なんとアメリカ人よりも日本人のほうが多い。従って、所得が下位の層に限ってみれば、アメリカ人よりもむしろ日本人のほうが狩猟民族的であるということになるのだ!
こうした誤解は、統計学の用語で言えば、正規分布とべき分布の違いから起こるものである。わかりやすく言えば、「平均値の嘘」だ。平均値をとってみれば、なるほどアメリカ人のほうが積極的に株や投信にお金を入れているように見えるのだが、平均値が日米の資産運用の真実の姿を正確に表しているかというと、決してそうではないのである。
さまざまな事象に関する数字を頭に入れることは重要だが、多少なりとも統計学や会計の知識を持っていないと、いともたやすく数字に騙されるはめに陥ってしまうのである。