安全保障上の懸念国となったロシア

【小泉】僕は広義のロシア研究者ではあると思うんですが、いわゆる地域研究としてロシアを見ているかというとそうではないんですよね。出発点は軍事オタクで、それが商売になっている。そうするうちにロシアが大戦争を始めてしまい、『国家安全保障戦略』の中でも安全保障上の懸念国であると位置付けられるようになった。

小泉悠『世界の大転換』(SB新書)
小泉悠『世界の大転換』(SB新書)

2013年に出された最初の『国家安全保障戦略』ではそうではなかったんですよ。北方領土問題もあるし、エネルギー供給面では重要なパートナーだから日露関係を「高めていく」と書かれていた。

それが現行の2022年バージョンでは位置付けが大きく変わりました。だから僕みたいにロシアを軍事的に研究している人というのは、昔で言う「敵国研究」をやっているということになるでしょう。残念だな、と思いつつ、今のロシアの振る舞いを考えるならこういう向き合い方はやむ得ないとも思っています。

もっと言えば、敵国研究ということを日本は組織的にやっていかないといけない。そういうことを安定的にできるポストはこれまで防衛研究所くらいでしたが、今後は大学等にも多少は枠が作れないかなと。そうは言っても隣国だし、私の妻もロシア人だし、「そういうふうにロシアを見ていいのか」と言われれば、なかなか難しいですけれど。

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