ウクライナが勝利しても復興できるのか

【小泉】意外とあるんじゃないですかね。中国やインドのような大国もロシアとの付き合いをやめないですし。特にインドは最近、堂々とロシア製兵器の輸入をしています。アルジェリアもそうです。東南アジアや南米の国々の中にもロシアとの関係を維持している国は多い。ロシアが西側から孤立しているというのは正しいですが、世界から孤立しているかというとそうではないと思います。

しかも、西側がもう政治的にも経済的も圧倒的な存在ではなくなりつつあるわけですよね。ロシアが言う「我々は孤立していない!」という主張は、強がりも半分あるでしょうが、もう半分は本当にそう思っているのでは。

【小林】逆に、仮にウクライナがなんらかの形で勝利した場合、欧州が荒廃したあの国の復興に責任を持てるかという問題があります。加えて「戦争が終わった。母国に戻って復興に尽力します」という在外ウクライナ人の若者がどのぐらいいるのかも大きな問題ですね。

もしもウクライナが「民主主義の勝利」を勝ち取ったとしても、民主主義は人ありきです。国にいて国体を守る人がいなかったら復興できません。他方でロシアが「軍事的な勝利」を収めて全く違う秩序の国になったとしたら、民主主義の西側は擁護できない。

ロシア国旗
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この戦争でプーチン政権が崩壊することはない

【小泉】何を持ってウクライナの勝利とするかは難しいですが、最大限に見積もっても領土内からロシア軍を追い出すことですよね。現実的には今の戦線を維持してロシア軍をこれ以上前進させないようにし、あまりにも不利な停戦条件を押し付けられないようにする、といったあたりでしょう。

いずれにしてもこの戦争で現在のロシア連邦とかプーチン政権が崩壊するということにはならないわけですから、どこかでもう一度、ロシアとの付き合い方をどうするかという問題を我々は突きつけられると思います。

【小林】国家の存亡をかけたこの兄弟殺しの戦争を経て、「ロシアとどう付き合うか?」は、世界にとっても日本にとっても難しいことでしょう。2010年代はオリンピックやサッカーワールドカップの影響もあって、私が教える大学でも「ロシア語やロシアの政治経済を学びたい」「ロシアに関係する商社で働きたい」という学生が結構いました。

ところが今は留学も容易にできないし、「卒業後、ロシアとのビジネスをする会社に勤めたい」という学生はどんどん減っています。

このままロシアの言葉や歴史や文化を知る若い人材が減っていくと、将来的には「英語やドイツ語を介してロシアを理解する」という、かつてのアフリカ研究者みたいな人が現れてくるかもしれないという危機感があります。