死ぬかもしれない戦争に志願者がいるワケ
【小泉】一方、実際に戦争に行ってるのは、もっと貧しい人たちです。ローンなんか組めないような人たちが、国防省の提示する高額の報酬に惹かれて志願するわけです。2024年までのロシアは戦時景気で給与水準が上がっていましたが、それでも全国平均で8万5000ルーブルくらい(約12万円)。
これに対してロシア国防省が提示する報酬は一番下の兵隊レベルでも20万ルーブル以上になるみたいですね。加えて戦場行きを志願した人に対しては州政府などから数百万円の祝金が出るところもあります。これが「生きて帰ってこられるかわからない」という戦争であっても、志願者がいる理由です。
【小林】徴兵について言えば、プーチンが動員をとめた影響も大きいですよね。
【小泉】プーチンが「部分動員」を呼びかけたのは22年9月の1回だけ。「軍隊経験のある予備役30万人を召集する」というプランでした。つまり、男子国民の義務である有事の予備役動員義務を戦後初めて発動したんですね。
ところがこれは公的な義務だから、召集令状がみんなに平等に届いてしまう。大学の予備将校課程は「軍隊経験に含まない」と軍は当初から言っていて、おそらくこれはエリート大学を出た人たちまで動員しないという配慮だったと思うんですが、そこまでのエリートではない、普通の中産階級の人々にも、日本で言う赤紙がバンバン届いてしまった。
人命をおもちゃのようにポイポイ捨てる
【小泉】私の知り合いでも召集令状を受け取った人がいて、こうなるとみんなパニックになるし、プーチンに対して「戦争をやめろ!」という声も出てきます。テレビの向こうの話だと思っていた戦争が自分や自分の家族のところに迫ってくると、沈黙していた中産階級も反抗するわけです。
だからプーチンはこれ以降、公式の動員は一度も行っていなくて、代わりに前述のようにカネの力で解決することを選んできました。ものすごく嫌な言い方ですが、貧しい人が戦場で死んでいっている分にはなかなか社会的問題にならず、したがって政権へのダメージにもならないという計算なのだと思います。
【小泉】人命をおもちゃのようにポイポイ捨てる戦争なんて、いつまで維持できるんだろうと思いますけれど……。
【小林】ロシアもウクライナも国家の存亡をかけているから、どっちも引くに引けない。仮に軍事的な勝利がロシアにあったとして、ロシアと今後パートナーとして正常な関係を構築していける国はあるんでしょうか。アフリカとかに限られてしまうのかなと思います。

