努力不足ではなく「構造的な帰結」

第2章:なぜ試作を担うものづくり中小企業は衰退してきたのか

試作を担うものづくり中小企業の衰退は、しばしば「後継者がいないから」「中小企業の経営努力が足りないから」といった言葉で説明されがちである。しかし、こうした説明は問題の核心を捉えていない。現実には、衰退は個々の経営判断の失敗ではなく、むしろ合理的に見える選択が長年積み重なった結果として生じた、構造的な帰結である。

第一に指摘すべきは、試作という仕事の本質そのものが、極めて不確実性の高い営みであるという点だ。試作の現場では、仕様は頻繁に変わり、設計変更ややり直しは前提となる。完成形が事前に明確に定まっている量産工程とは異なり、「作ってみなければわからない」という不確実性を内包している。この不確実性こそが、本来は試作の価値であり、技術的な学習や改善を生む源泉であった。

ところが現実の取引では、この不確実性が十分に評価されてこなかった。試作はしばしば量産品と同じ延長線上で扱われ、同様の契約慣行や価格感覚が適用されてきた。その結果、仕様変更に伴う追加工数や、失敗から得られる学習のためのコストは、暗黙のうちに中小企業側が引き受ける形となり、現場には疲弊だけが蓄積していった。試作が「価値創造の工程」ではなく、「割に合わない作業」として認識されるようになった背景には、この構造がある。