若者のスマホ・SNS依存が世界的な問題になっている。それらを開発するテック企業は、なぜ対策を行わないのか。ニューヨーク大学のジョナサン・ハイト教授は「むしろ各企業は、若者ユーザーの市場シェア獲得に躍起になっている」という――。(第2回)

※本稿は、ジョナサン・ハイト『不安の世代』(草思社)の第10章「政府とテック企業が今すぐできること」の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/Urupong
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グーグルの元倫理学者が警鐘を鳴らした「底辺への競争」

テック企業を突き動かすインセンティブについて最も鋭く分析してきた人物の1人が、グーグルの元倫理学者トリスタン・ハリスだ。2013年、ハリスはグーグルの従業員向けに、「ユーザーの注意散漫を最小化し、尊重する呼びかけ」と題したプレゼン資料を作成した(*1)

ハリスは、たった3社――グーグル、アップル、フェイスブック――によって開発された製品が、多くの人類が有限の注意を何に向けるかを方向づけており、意図的に、あるいは気づかないうちに、人々の注意を浪費させていると指摘した。そして、テック企業による設計上の選択によって、デバイス画面以外のことに向けられるべき人々の注意の総量が世界的に急落してしまったと主張した。

2015年にグーグルを退職したハリスは、そうした現状に警鐘を鳴らすとともに解決策を提供する重要な組織、センター・フォー・ヒューメイン・テクノロジーを創設した。2020年、アメリカ上院委員会公聴会に招かれ、消費者保護に関する証言を求められたハリスは、人々の注意を搾り取る熾烈な競争にさらされるテック企業が直面するインセンティブについて明確に説明した。

人の注意を搾り取るために悪用できる心理的脆弱性は多数あり、その中には人間の基本的欲求に基づくものもある。テック企業は「底辺への競争」(各プレーヤーが競争のために基準・条件を引き下げ続け、全体としては望ましくない低水準に陥る現象)として知られる集合行為問題に陥っている、とハリスは言う。

なぜなら、もし、ある企業が利用できるはずの心理的脆弱性を利用しなければ、より良心的ではない競合他社よりも不利な立場に置かれてしまうからである(*2)