グルタミン酸は植物系、イノシン酸は動物系

グルタミン酸ナトリウムが発見されたのち、かつお節のうま味成分としてイノシン酸(正式な化学名は5’-イノシン酸)が1913年に発見された。発見したのは、池田菊苗の高弟である小玉新太郎(1885~1923)である。

グルタミン酸が植物系食材に多いのに対し、イノシン酸が多く含まれる食材には、かつお節をはじめ、イワシや鶏肉、豚や牛肉などの動物系食材が多い。

さらに、1957年には、干しシイタケのうま味成分として、グアニル酸(正式な化学名は5’-グアニル酸)がヤマサ醤油研究所の國中明(1928~2013)によって発見された。これらはいずれも日本人研究者の業績であり、これらの業績をあげることができたのは日本人が特別、味に敏感なためであろうか。それとも以下に述べる出汁だし文化が発達していたためであろうか。

「うま味の相乗効果」を日本人は知っていた

日本料理で大切なのは出汁と言われる。それでは出汁とは一体なんなのであろう。よく出汁に使われるのは上述の昆布である。ここにはうま味成分としてグルタミン酸が含まれていることは知っていただけたと思う。

このグルタミン酸に、さらにかつお節が加わるとそのうま味が強く長く感じるようになる。それはかつお節に含まれるうま味成分である核酸系化合物であるイノシン酸はグルタミン酸が味覚受容体に結合するのを補助するためということが最近わかってきた。

このような作用を「うま味の相乗効果」と呼んでいる。同じようなことは、グアニル酸でも起きる。私たち日本人は、昆布で取った出汁にかつお節や干し椎茸の出汁を加えるようなことを、うま味成分の本態やうま味の相乗効果のからくりを知るはるか以前から自然におこなってきたわけである。

日本のだし。昆布、かつお節、煮干し、干し椎茸がかごに並べられている
写真=iStock.com/key05
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美味しい出汁は日本の水だからこそ取れる

なお、出汁においては香りも重要な要素である。かつお節には香ばしい香りが含まれている。それは、かつお節製造にあたって燻製にする際についた香り成分も含まれるためという。

東京の国立科学博物館にて開催された「和食」の展示会(2023年10月28日〜2024年2月25日)を見学した。そこでは、日本の水(軟水)は出汁を作るのに適していると述べられていた。水が大切なのは、精密機械工業や日本酒製造などばかりではないと大変に興味深く感じた。

アメリカなどのミネラルに富む硬水では美味しい出汁を取ることは難しいらしい。その逆であろうか。アメリカで飲むコーヒーはとても美味しいと思った。これは硬水のなせるわざだったのであろうか。興味のあるところである。