日本経済が活性化すれば日本人は幸福になれるのか。京都大学人と社会の未来研究院教授の内田由紀子さんは「国際比較をする上で、経済的豊かさと人生の満足度には一定の相関がある。だが、ある程度のGDP以上になると、経済が幸福度にもたらす影響は頭打ちになることも示されている」という――。

※本稿は、内田由紀子『日本人の幸せ ウェルビーイングの国際比較』(中公新書)の一部を再編集したものです。

渋谷スクランブル交差点
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「経済状況のわりに」ランクが低いとされる日本

人生に意義を感じるというのは、一体どういう状態でしょうか。

これまでの人々の歴史を振り返ると、人が求めているものや幸福とは何かという捉え方は変化してきました。かつては安全・経済・健康が私たちの社会の発展を支えるものとして重要視されてきました。もちろんそれは今でも変わりありません。しかし、それだけではなく、自由や政治の公平さ、開放性や多様性なども重要な基盤として考えられるようになってきました。

また、第1章で紹介したように、文化心理学では文化の中で共有される「意味」についての問題が論じられてきました。そうであれば、幸福の感じ方にも文化差があるだろうと予想されます。

幸福の国際比較に関しては、さまざまな資料があります(詳細は第4章を参照ください)。代表的なものはOECDのHow’s life? index、アメリカ・ギャラップ社の世界幸福度レポート(World Happiness Report)などがこれに当たるでしょう。あるいは世界価値観調査(World Values Survey)でも幸せに関するデータを分析できます。世界基準の調査で常にランクの上位にあるのは、デンマークやフィンランド、ノルウェーなどの北欧諸国です。日本は「経済状況のわりに」ランクが低いとされています。

経済の安定は「不幸を減らす」

経済状況のわりに、と書きましたが、実際、国際比較をする上で、経済的豊かさと人生の満足度には一定の相関があります。しかし完全に関係しているというよりは、経済の安定は「不幸を減らす」という表現が正しいかもしれません。というのは一定の経済水準がある国で幸福度の低い国は見られないからです。一方で逆にラテンアメリカの国々のようにGDPがあまり高くなくとも、幸福度が高い国はあります。

また、ある程度のGDP以上になると、経済が幸福度にもたらす影響は頭打ちになることも示されています。幸福度を高めるためにさらに経済活動を拡大しなければという考え方が有効なのは、ある発展段階までにすぎません。

日本はGDPが下がっていることから、暗く不幸な将来像をメディアは描きがちです。しかし、本当にそうなのか、そして、私たちがどういう幸福を求めていくべきかを考えなければなりません。