「泳ぎ」上手だけでは信頼は得られず

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海外では

上に立つ者として英断を下さなければならないとき、その人間の「精神の癖」が出る。若い頃から社内政治が得意で、上司に諂(へつら)いながらうまく泳いできた人は、危機的状況に面したときでも「泳ぎ」を考える。しかし、こうした行動は部下をはじめ周囲がしっかりと見ており、信頼関係は構築できない。結果、部下の評価、外部の評判が上に伝わり、役員に昇れないという事態にもつながる。

熾烈な出世競争の裏には当然「嫉妬」や「妬み」心が渦巻く。そういった感情につぶされない精神力も役員になる人には必要のようだ。

「かわすというより『無視できる』人が人間的にも本物。危機に面したときはもちろん、外国企業とも十分渡り合えるでしょう」(リクルートエグゼクティブエージェントで大手メーカーを担当する森博禎ディレクター)

グローバル化がさらに求められている昨今、海外企業との折衝も重要ファクターだ。しかし近年、海外自体に興味がない若者も増えている。

今の日本企業の敗北は、グローバルに渡り合える人間が経営に携わらなかった結果だと厳しい指摘もある。国内で満足するだけの経営では通用しない時代になっている。

「日本人はとかく英語力や肩書で商売しようとしますが、英語は挨拶程度でも充分。あとは日本語で堂々と折衝すればいい」と森さんが語るように、語学力はさほど問題にはならない。現に大阪弁をまくし立て海外で契約を取る社長の逸話もある。

また、先方の担当者が自分より格下の「肩書」の場合、「バカにされた」と憤慨する日本人も多い。こうしたケースは部長クラスによく見られるという。こういう人物は、自分の語学力を駆使しようと奮起する傾向もあるが、程度によっては多々誤解を生む。海外交渉で求められるのは起動力と情熱。外国語は通訳に任せてもよい。要はグローバルな目で見ても「肝が据わっている」ことが役員の前提条件なのだ。

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