人間力■小手先の政治力より、辛酸を乗り越えた強さで勝負できるか
「仕事力」も重要だが、トップになる人の資質の根本は「人間力」につきる。どんな苦労でも心の糧にできるかどうかで人間の器の大きさは決まる。部下の功績をわが手柄にし、自分を大きく見せるようでは、役員の資質を語るどころではない。
「限界状態を若い頃に1度は経験している。それも数年の時間軸で。そうでなければトップに立てても部下に優しくなれません」と中村さん。
逆境を乗り越える力は、最終的に「胆力」であり、精神的体力である。
「逆境を逆にチャンスと見なす柔軟性と、どん底から這い上がる強さがある」(メディカル系大手のエグゼクティブサーチを担当するケンブリッジ・リサーチ研究所、長谷川淳史取締役副社長)。これが役員たるべき人の器のようだ。
「危機に直面したときに人間の本質が出る。知性だけでなく危機をバネにして改革できる『腹の力』が備わっています」と、橋本さんも言う。
こうした「人間の器」の大きさは、生まれつき決まっているわけではない。人生の辛酸を嘗め、それを乗り越えてこそ大きくなるのである。