それはさておき、私見だがフリーCFは損益計算書の「営業利益」よりも多く確保すべきだろう。これが少ない会社は財務戦略、拡大戦略などを実行する力が不足する状態ともいえる。
銀行などの信用判断では、最終利益(税引後当期純利益)に減価償却費を足した金額を「企業の返済原資≒フリーCF」と見ることがある。その金額が、想定される借入金の実際返済額より少ない場合は、経営に問題があると判断される。ちなみに「運転資金の融資は月商の3カ月以内」「設備資金の融資はフリーCFの5年以内」が理想だ。
とはいうものの、普通のビジネスマンが貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の財務諸表をいくらひっくり返してみても、どれが経営を維持するための投資なのかは皆目見当がつかない。そこで、公表用の財務数値からわかる簡単な方法をご紹介したい。別図のように「営業CF-投資CF」という、キャッシュフロー計算書を見れば誰でもすぐにわかる数値を使って近似値を出せる。
冒頭でも触れたが、フリーCFが多いということは、経営者にとって自由に使えるお金が多いことを意味する。つまり、腕を振るう余地が大きくなるわけだ。その具体的な使い道には、借入金を返済して財務を強化する、自社株買いに回して株主還元を図る、設備投資やM&A(企業の買収・合併)の資金に充てるなどが挙げられる。
ただ、フリーCFが多いだけでは不十分で、そのお金を有効に使っているかどうかが大切なのだ。この点に関して勘違いをしないように注意しながらフリーCFをチェックしていただきたい。
(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)