アベノミクスが掲げる成長戦略のなかで、企業の設備投資による内需拡大を図るために、設備投資を行った企業に対して法人税の減税を行う方針が打ち出された。
既存の制度では、前年度より総投資額を10%増やした場合に、設備投資額の3%を税額控除するものがある。さらに今回は、生産性の向上が見込める設備に対象を絞る代わりに投資の増額の条件をなくし、控除額についても5%を上回る規模を検討するという。
このほかに「設備投資の即時償却」という方法も挙がっている。設備の減価償却を一括で行うことで、初年度の税負担を軽減するというものである。その仕組みを詳しく見ていこう。
企業の設備については、本来、耐用年数全体にわたって償却するルールになっている。たとえば、資本金1億円以下の中小企業などの場合、30万円未満の固定資産を取得年度に一括費用処理できるなど、会社規模や固定資産額で異なる扱いもあるが、一定額以上の設備についてはモノによって決められた耐用年数に応じて減価償却していく。一方、即時償却の制度は設備の取得年度に一括で償却、または耐用年数を短縮して節税効果を高めるなどの狙いがある
たとえば3000万円の設備を取得し、耐用年数が3年、売上高が年3000万円だとする。そして、毎年均等に減価償却を行っていくと、「3000万円÷3年」で1年目の減価償却費は1000万円。売上高からその1000万円が控除されて利益は2000万円となり、法人税などの税率が40%なら税額は800万円だ。
即時償却ではどうだろう。1年目に一括して3000万円の減価償却ができるため、売り上げ3000万円から差し引いて利益はゼロとなり、法人税はかからない。これだけ見ると即時償却には大きなメリットがあるように思えるが、2年目以降を考えると話は違ってくる。