従来の軍事的脅威を越えて
日本の安全保障課題は、従来の軍事バランスをはるかに越えている。
中国、ロシア、イラン、北朝鮮は、経済、情報、技術を武器化する多面的な脅威をもたらしている。中国の偽情報キャンペーンは一夜にして日本の産業を壊滅させうる。サイバー攻撃は重要インフラを狙う。サプライチェーンへの依存が強制の手段になる。北京が消費者ボイコットや規制上の嫌がらせを仕組むとき、市場そのものが武器になる。
高市首相の台湾有事発言より以前から、日本はずっとグレーゾーン戦争に直面しているのだ。反日的な言説を広める組織的なボットネットワークや知的財産の窃盗、台湾の存在を認める企業への経済圧力、海洋権益の段階的な侵食……。
領土防衛と限定的な戦力投射を注力した日本の現在の防衛態勢は、これらのどれにも十分に対応できていないように見える。
日中の軍事格差はさらに深刻だ。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、2024年の中国の軍事支出は、日本の支出額502億ドルの約6倍、2960億ドルにも上る。
国際戦略研究所(IISS)の報告では、日本の潜水艦は22隻で、中国は70隻以上。
米国防総省の中国軍事力に関する年次報告書は、日本の航空自衛隊は約290機の戦闘機を配備し、中国人民解放軍空軍は2000機以上を保有しているという。
一方、SIPRIによれば、アメリカは2024年に9160億ドルを防衛費に費やしたが、海外への関与を減らす圧力が高まっている。
最も重大なのは、中国が自国沿岸から数千キロメートルに及ぶ戦力投射能力を発展させ、従来の防衛費では対抗できない経済・情報戦をも習得したことだ。
核の側面がさらに複雑さを増している。米科学者連盟によれば、中国は約500発の核弾頭を保有し、2030年までに推定1000発まで拡大する見込みだ。北朝鮮は経済的に脆弱であるにもかかわらず、軍備管理協会によれば推定30~50発の核弾頭を保有し、数分で東京に到達できる運搬システムを改良している。
ワシントンが実際に求めているもの
トランプ政権はアメリカの期待を明確にしている。同盟国は「自地域の主たる責任を負う」べきであり、「集団防衛へはるかに多く貢献する」べきだと。
NATO同盟国は今やGDPの5%を防衛費に充てる圧力に直面している(日本は現在2%しか充てていない)。アメリカは安全保障上の約束を、コスパで判断しているのだ。
アメリカの戦略目標に貢献する同盟国は支援を受けるが、“タダ乗り”する国は、正式な条約があっても、ワシントンからの助けが少なくなるだろう。アメリカはこれまで「他国にバラマキすぎた」と思っているのだ。
これは日本の政治家が回答を避けてきた質問だ。「日本がアメリカのインド太平洋戦略にとって単に重要な存在ではなく、不可欠な存在になるには、実際に何が必要なのか?」

