「多様性の把握」をしたかった
これほどまでにヒアリングに力を入れる理由は、多様性の把握だと榎本氏は言う。
「街で遊んでいるギャルっぽい人、普通に部活を頑張って日焼けしている人など、いろいろなタイプの人と1週間で200人ぐらい面接をしたことがある。その際、かわいくなりたいという気持ちは共通しているが、ニーズはそれぞれ違うとわかった。そこで、モードを選べる機種を発売した」(榎本氏)
2005年に発売した「美族」は、美白の「ひめセレブ」、美黒(=肌色が美しく黒くなる)の「ギャルセレブ」、きれいな「ナチュセレブ」などのモードを選べた。しかし、この頃は「好みがはっきり分かれていてわかりやすかった」と榎本氏は言う。
「今はそこまで極端にファッションが分かれていない。友達同士でもそれぞれがお互いの好みを尊重している人が多く、トレンドが混ざっている印象だ」(榎本氏)
今の10代は顔だけでなく雰囲気も盛りたい
今どきの10代は、日によってファッションの系統を変えることがある。プリを撮るときは友達同士で事前に打ち合わせて似たコーディネートにすることもあるが、まったくバラバラな場合もある。
現在のトレンドは、顔だけでなく雰囲気も盛れること、そして体験の価値が高まっていることだという。2025年春に発売された「Hyper shot」では、「無加工風」、「ナチュ盛れ」、「プリ盛れ」の3つが選べる。さらに天井から映せる「ハイアングルショット」や、LEDによるカラー背景などで全体的な雰囲気を盛る。選んだシールデザインの上に落書きができるなど、楽しい仕掛けも用意している。
フリューが業界トップを走り続ける理由は、このように入念なヒアリングを通してユーザーの動向を掴み、製品企画のチューニングを行っていることにある。つねに新しさや驚きを提案することが最も重要だとして開発を進めており、こうした方針により、女子高生を中心とした若者から熱い支持を得られている。


