「経験と感情」が乗った言葉が力を持つ

面接官は、難しい言葉そのものを評価しているわけではありません。

「この人はどんなときに心が動くのか」
「何に困り、どう工夫してきたのか」
「一緒に働くとどんな空気感の人なのか」

そういった「人となり」を知りたいのです。逆に、少しぎこちなくても、こんな話には力があります。

「担当していた地域イベントの集客に苦戦し、何かできることはないかと思い、Instagramを始めました。最初は反応がなく落ち込みました。ですが、写真の撮り方や紹介文を工夫しながら投稿を続けました。その後、お店の方から『来店が増えました、ありがとうございます』とDMをいただくことができました。本当に嬉しかったです。」

ここには、

・行動
・失敗
・工夫
・成果
・感情

という流れがあるため、面接官の頭にも残りやすいのです。綺麗な言葉で飾るほど、人は遠ざかっていきます。これは面接に限った話ではありませんが、自身の経験と感情がある言葉のほうが、圧倒的に強く、印象に残ります。

インタビューを受ける人
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

自己アピールは盛るほど印象が悪くなる

面接の現場では、生成AI的な文章を参考にした結果、必要以上に“盛った”自己PRになってしまうケースが後を絶ちません。

「リーダーシップを発揮し、チームを牽引しました」「プロジェクトの成果を最大化しました」

このような表現は、一見すると優秀さを感じさせます。しかし、面接官の表情はむしろ曇ることが多いのです。というのも、完璧すぎる話には、人が本能的に不信感を抱きやすいという結果が出ているからです。

心理学には、スタンフォード大学の社会心理学者アロンソンが提唱した「プラットフォール効果」があります。

これは、「人は完璧な人よりも、少し不完全な人のほうに好感と信頼を抱きやすい」という現象です。わずかな失敗や弱さが、その人の人間らしさを感じさせ、距離を縮めてくれるのです。

面接で誇張した自己PRが嫌われるのは、この心理がそのまま作用しているからです。例えば実際には、

・議事録をまとめただけ
・日程調整をしただけ
・ポスターを作成しただけ

なのに、AIが生成した文章に引っ張られてチームの成果を大きく押し上げた存在のように話してしまう――。

しかし面接官は日々何百人という応募者を見ています。過剰なアピールは、すぐに見抜かれてしまいます。そして一度「盛っているな」と感じさせてしまうと、面接官の評価は一気に下がります。