日本は安全、治安、清潔度で世界一だが…
日本の空港はどうだろうか。生真面目で、ワクワクするような楽しみは少ないが、安全度、治安の良さ、トイレの清潔度において、日本の空港は群を抜いて世界一だ。白タクやメーターを倒さないタクシーがいない安心感もある。しかし地方空港のUber事情はよくないのも事実だ。
一方、アジアの空港も近年、洗練度を増している。シンガポールのチャンギ空港、韓国の仁川空港、タイのスワンナプーム空港に代表されるように、機能的でデザイン性が高く、整備やショップのクオリティも高い空港が増加傾向だ。
チャンギ空港直結モール「JEWEL」中央には世界一高い屋内滝「レイン・ボルテックス」があり、空港を訪れた人はその姿を忘れることはない。この高さ約40mの水の塔は、飛行機に乗らない人たちもよく見に来るほどのアトラクションだ。滝を囲むフォレスト・バレーは資生堂が提供する4フロア吹き抜けの屋内庭園で、6万本以上の木々が茂る大自然のような空間だ。
地上5階のキャノピーパークは1万4000m2のエンタメ空間で、入場料にすべり台、霧が出る広場、庭園、遊歩道などが含まれている。特に人気なのが地上25mの網の上を歩くウォーキング・ネットで、網の間から下が見えてスリル満点のアトラクションだ。
派手さはなくても、外観が美しい空港
仁川空港では伝統文化体験プログラムが用意され、トランジット客が短時間で韓国文化に触れられる仕組みが整っている。また、先にご紹介したイスタンブール空港同様に、空港近くの観光スポットを周遊できるさまざまな特徴あるトランジットツアーを用意している。1時間コースから5時間コースまで、時間を持て余すことなく、トランジットを最大限満喫できる配慮が施されているのだ。
ほかの国はどうだろうか。アメリカの空港は広大なため、空港運営の効率化と利便性の向上を目的に航空会社別にターミナルが分かれているところが多くなった。仕方ないのだが、トランジットの楽しみは半減したと言わざるを得ない。また、チューリッヒ空港やマドリード=バラハス空港はドバイやアジアの空港のような派手さはないものの、外観デザインの美しさで利用客を魅了する。
空港に足を踏み入れると、トム・ハンクス主演の映画『ターミナル』(2004年)で描かれたように、行き交う荷物やカートの動き、さまざまなエアラインのCAやグランドスタッフが颯爽と歩く姿、ローカル空港で遭遇する反転フラップ式案内表示板のパタパタという心地よい音――こうした「空港の脇役」にも高揚感を引き立てる要素が詰まっている。

