イーロン・マスク率いる「スペースX」も存在感

最上位には、ロッキード・マーチン、RTX、ボーイング・ディフェンス・スペース・アンド・セキュリティ、ノースロップ・グラマン、ジェネラル・ダイナミクスといったプライム(最上位元請け)が位置し、世界トップ10の半数を占める中核層として巨大契約と統合システム開発を担う。

その下には、エンジン・材料・センサー・航空機構造・IT統合などを担うミッドティア(中堅総合)が位置する。供給能力の再構築が課題となっていることから、政策議論が活発化している。

さらに近年は、スペースX、パランティア、アンダリルなどの防衛テック(AI・宇宙・ドローン)が台頭し、「ソフトウェア×センサー×自律化」を武器に急速に勢力を拡大している。

米国の防衛産業の特徴は、まず巨大なR&D投資と、民生技術との相互乗り入れによって継続的に技術進化を生み出している点にある。さらに、連邦政府による長期契約が安定した研究・生産サイクルを支え、国際共同開発においても中心的役割を担う。構造上の核心は、単にプライム企業の巨大さだけではなく、その下位層に厚く存在するミッドティア企業と防衛テック(AI・宇宙・ドローン)企業が層として連動し、競争力を底支えしている点である。

中国モデルは「産業・科学技術・軍事」を一体運用

2.中国:国有巨大企業×軍民融合の“国家主導システム”

中国の防衛産業の中心には、5大国有企業グループが存在する。航空分野はAVIC(中国航空工業集団)、地上兵器はNORINCO(中国兵器工業集団)、ミサイル・宇宙はCASIC(中国航天科工集団)、造船はCSSC(中国船舶集団)、電子戦はCETC(中国電子科技集団)が担っている。これらの企業群は、それぞれ異なる領域を分担しながらも、国家戦略に沿って統合的に運用される産業アーキテクチャを形成している。

中国の最大の特徴は、産業・科学技術・軍事を一体で運用する“軍民融合(MCF:Military-Civil Fusion)”モデルを国家戦略として採用している点にある。AI領域では百度・アリババ・テンセントが軍と協力し、量子分野は国家主導の投資で推進され、通信分野ではファーウェイやZTEが軍事用途にも用いられる技術を保有する。さらにドローンでは、民生市場で世界シェア約7割を持つとされるDJIが象徴的で、民生技術が軍事領域へ直結する構造が鮮明になっている。

DJI、ケルンメッセ、フォトキナ 2016
DJIの展示ブース(写真=Stefan Brending/CC-BY-SA-3.0-DE/Wikimedia Commons

中国モデルの特徴は、まず何よりも国内市場の巨大さに支えられている点にある。国家が明確な方向付けと資金投入を行い、戦略目標に沿って企業・研究機関・軍を一体で動かすため、開発はスピード優先で進められる傾向が強い。一方で、透明性の低さや技術成熟度のばらつきという構造的課題も併存する。総じて、「国有巨大企業×国家戦略」が産業全体を牽引する、極めて中央集権的なアーキテクチャである。