大手全社が販売する淹れたてコーヒー。今年1月、セブン-イレブンが最後に参入し、カフェチェーンを凌ぐ勢いで伸びているという。なぜ注力するのか。「売り上げ以外の目的」を明らかにする。
淹れたてコーヒーは各店のスキルを如実に映し出す。セルフ方式であれ、接客方式であれ、コーヒーの提供には作業がつきもの。豆やカップを切らさない、機械周りの清掃を怠らないといったオペレーションをスムーズに遂行し、POPや陳列の工夫などで関連商品の訴求に努めれば、コーヒーの売り上げは確実に伸びていく。
接客を「売り上げを伸ばす武器」と位置づけているのがローソンだ。試験導入に選んだのは長野県の店舗。「しょせん東京だから成功した」と他エリアの加盟店に言われないよう、あえてセブン-イレブン・ジャパンの鈴木敏文会長のお膝元であり、セブン-イレブン城下町で挑戦した。多勢に無勢で苦戦を強いられている2つの加盟店を成功に導くその過程で、「MACHI cafe」を統括するローソンのまちかど厨房部部長・吉澤明男氏は、接客の効果を実感したと言う。
「コーヒーの売り上げは必ずしも立地が決め手ではない。接客次第です。『いかがですか』の言葉があるのとないのとでは、コーヒーの味が違ってくる。ホスピタリティが商品戦略になるんですね。マシンのボタンを押してから、淹れたてをお渡しするまでの時間にお客さまと会話をすれば、待ち時間も短く感じてもらえます。もちろん、都心部の店では求められるホスピタリティの質が異なりますが、店の頑張りで結果が出ることを学びました」
唯一、接客販売方式を採用したローソンには、負の遺産解消という狙いもあるようだ。UBS証券でアナリストを務める守屋のぞみ氏は次のように見る。
「過去に急速に店舗数を拡大したため、ローソンは店舗ごとのバラつきが大きい。接客によりコーヒーを売るのは、かねてからのこの課題を解決し、全体の底上げを図るためでしょう。コーヒーを売るようになれば、ほかの商品も売れる。おのずと店のスキルアップにつながります」
ほかのチェーンでも、試飲を熱心に実施する店、マシンのそばに半生菓子を陳列し、手書きPOPを掲示する店は数字に結びついている。嗜好性が強いコーヒーは、店の雰囲気、スタッフの接客、提供スピードに左右されやすい。これは喫茶店のコーヒーだけではなく、コンビニコーヒーにおいても同様なのだ。