10カ月間で110万人がリストラ対象に

米国の再就職支援企業である、“チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス”の調査によると、10月の人員削減計画数は前年同月比183%増の15万3074人だった。1~10月では109万9500人に上り、2020年以来の最高水準となっている。

ロボットのアームでゴミ箱に入れられようとしているビジネスマン
写真=iStock.com/Moor Studio
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リストラを業種別にみると、物流や情報技術分野、コンサルティングなどが目立つ。その背景の一つは、AI=人工知能の導入によって、AIが人に代わって仕事をしてくれることだ。主に、データ入力や文献整理、調査の補助業務などでは、急速にAIが人に取って代わっている。

【図表】アメリカを拠点とする企業の人員削減計画数の推移
出典=CHALLENGER, GRAY & CHRISTMAS「CHALLENGER REPORT October 2025」より

言語化が難しい領域ではまだまだ人間が活躍

一方、当初、AIへの代替が懸念されたジャーナリストや、経済動向の入念な分析などの分野では、目立ってAIによる代替は進んでいないようだ。こうした分野では、それぞれの個人が持つ経験やセンスが重要とみられる。また、音楽や絵画といったアート(芸術)、エンターテインメントの分野でもAIが人に代わるまではいっていない。

AIは推論能力を高め、定式化された計算の高速化(効率化)や、物事を言語化するのは得意だ。それに対して、人間の経験や感覚、感情など言語化が難しい領域に関しては、AIやロボットへの置き換えは進んでいない。おそらく、今後もそうした傾向は続くだろう。

AIが人間に代わってバリバリ仕事を行い、多くの人が失業する状況はすぐには実現しないだろう。ひとまず安心というところだ。