その薬の知識、最新情報に追いついていないかも。正しい薬の選び方を現役薬剤師に聞いた。

多剤服用以外にもある危ない薬の飲み方

高齢になると、ひとりの患者が複数の持病を抱えることが珍しくなくなり、それに伴って服用する薬の種類も増加します。中には1人で10種類以上の薬を飲んでいるケースも。

しかし、どの薬にも相互作用があるため、飲み合わせによっては効果が打ち消されたり、逆に作用が強まったりして健康を損なうこともあります。医学的にも、服用する薬が6種類を超えると副作用のリスクが一気に高まることが知られています。

ただ、「薬が多いなら減らせばいい」という単純な話ではありません。医師と患者の間にはギャップが生じがちです。それでも体の安全を考えるなら、不要な薬は減らすのが重要であり、本来ならばそれが薬剤師の役割です。

さらに、高齢者に多い「薬の誤った服用方法」にも注意が必要です。よくあるのが「飲みにくいから」と自己判断で薬を砕いてしまうこと。近年は製剤技術が進み、24時間にわたって少しずつ効き目を発揮する徐放性製剤や、数時間後に効果が出るよう設計された薬もあります。これを砕いてしまうと本来の効果が失われる可能性があるうえ、血液中の薬の濃度が急上昇するというさらに重大な危険もあります。

また、処方された粉薬を冷蔵庫に保管するのも間違いです。冷蔵庫の中は結露が起こりやすく、湿気しけて薬が劣化し、本来の効果が期待できなくなるため、自己判断での冷蔵庫の保管はやめましょう。

高齢者がやりがちな間違った薬の3つの飲み方

1 糖尿病治療薬

糖尿病の常識は変化、新薬が続々 最新薬で負担を減らしQOL向上へ
まだ使っている? 「スルホニル尿素薬」
食べ物のイラスト

体の中でインスリンの働きが弱まり、血糖値が下がらなくなる糖尿病。糖尿病の「疑いがある人」と「可能性がある人」を合わせると、潜在的な患者数は2000万人にも上ると言われていますが、その治療薬は近年、劇的に変化してきました。

かつてはアマリールなどの「スルホニル尿素薬」に分類される薬が主流でした。これは、すい臓にインスリンを分泌するよう働きかける薬ですが、インスリンを分泌させすぎることで負担がかかるのがネックでした。

次に出てきたのが、肝臓で糖がつくられるのを抑制し、同時にインスリン自体の効き目をよくする「ビグアナイド系糖尿病薬」です。この薬を使うことで、インスリンの量が少なくても血糖値を下げることができるため、この10年ほどはよく使われてきました。

そして近年注目されているのが「SGLT2阻害薬」や「GLP-1受容体作動薬」です。SGLT2阻害薬は多すぎる糖を尿として積極的に排出させ、1日で角砂糖20個分もの糖を体外に出します。「糖が多すぎるなら出せばいい」というわかりやすい薬で、インスリンを増やして血糖を下げてきた従来薬とは発想がまるで異なるのです。

一方のGLP-1受容体作動薬は、血糖値を下げるだけでなく食欲を抑制し、体重減少効果も期待できます。最近では内服薬も登場していて、2型糖尿病患者の治療薬として広く使われていますが、自由診療でダイエット目的の処方が増え、本来の患者への供給不足も指摘されています。