※本稿は、菅野朋子『韓国消滅の危機 人口激減社会のリアル』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
精神安定剤に頼る韓国の学生
SKY(韓国で最難関とされるソウル大学、高麗大学、延世大学)のひとつで教鞭をとる教授と話す機会があった際、教授は「最近は薬(精神安定剤)に頼る学生が増えて心配だ」と話した。学生が落ち込んでいるように見えたり、逆にハイテンションな場合にも必ず声をかけるようにしているという。
「ここ10年くらい、精神安定剤のような薬を常用する学生が増えました。気分が落ち込んだ時や集中したい時などに飲むようです。親や周りが期待するソウルの大学に入ってもまだその先が続きます。大企業に入れるのか、人がうらやむような、自尊心を保てる仕事に就けるのか、不安定な状態が続くのでしょうねえ。今の子どもたちは兄弟姉妹も少ないですから、親の期待が過度に集中している。かわいそうな時代になりました」
「ちょっと休む」青年たち
そうした強迫観念からか、その反動としてここ10年の間には、仕事を求めてさまよい、疲れ果てた末に「ちょっと休む」青年が増えている。「ちょっと休む」は、特別な理由もないのに、調査直前の1週間の間、学業も就業も何もしなかったと回答したことを指す。
2025年3月、韓国の統計庁は、29歳未満の生産年齢人口の中で、何もせずに休んだ人が50万4000人いると発表した。集計を始めた03年には23万6000人ほどだったのが、2倍以上に膨らんだ。休んだ期間は平均22.7カ月となっている。その理由として、「(自分に)適合した仕事の不足」をあげた人がもっとも多く、次に教育・自己開発、バーンアウト、再充電の必要性と続いている(韓国雇用情報院調査)。
日本では「ニート」と呼ばれるこうした青年たちの傾向は、世界的に共通しており、2023年の国際労働機構(ILO)によれば、全世界で学業も、経済活動もしない青年の割合は20.4%に上るという。
25年5月には、60歳以上の経済活動参加率は49.4%となり、青年層(15~29歳)の49.5%とわずか0.1ポイント差となった。

