女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率で、韓国は2023年に過去最低の0.72という衝撃の数値を叩き出した(24年は0.75に微増)。韓国社会に一体何が起きているのか。フリーライターの菅野朋子さんは「SNS利用率が9割を超える韓国では、日本以上に他人と比較する文化が醸成されている。『こんな環境では子供は幸せになれない』と思う若者も少なくない」という――。
※本稿は、菅野朋子『韓国消滅の危機 人口激減社会のリアル』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
小3児童が同級生に「住む家マウント」
教師である朴智英(29歳、仮名)が勤めている小学校はソウル郊外、新築のマンションが林立する環境にある。韓国にはマンションのブランドが数種類あり、場所、築年数などによって価格に差がある。
朴は小学3年生の担任で、クラスには30人ほどの生徒がいる。ある日、男児2人が喧嘩になり、生徒が呼びに来た。急いで駆けつけて事情を聞くと、1人が、そのあたりでは価格帯が低めのマンションに住むもう1人へ、「おまえのうちは貧乏だから、あのマンションに住んでいる」と言ったことが引き金になったと分かった。朴は、その場をなだめて、少年らを仲直りさせた。
だが、問題はむしろここからだった。
翌日、喧嘩を仕掛けた少年の父親から面会を求める連絡が来た。場を設けると、父親は開口いちばん「あのマンションに住んでいるのは金がないからというのは事実だ。なぜ本当のことを言ったうちの子どもが謝らなければいけなかったのか」と言い放ち、問い詰めてきたという。
朴は、この出来事が今の韓国社会をよく表していると語った。
「韓国人は自分がどう見られているのか、他人の目をとても気にします。それがSNSの拡大で、もっと酷くなりました。昔は他の人がどんな風に暮らしているのかなんてそれほど分からなかったと思うんですけど、今はSNSで簡単に分かってしまう。それに引っ張られて比較すればするほど不安になる。私もそうだし、今の子どもたちも親のことをそのまま真似てしまう」
そこから「こんな環境の中で子どもは幸せになれるのだろうか」という疑念が浮かぶようになったそうだ。

