上司は若い部下の脳の育成に責任を持て

最後に、部下からもっと尊敬されたい、若い人とうまく付き合いたいと思っている人はどうすればいいかについてお話ししましょう。本来、リーダーに選ばれるのは脳の効率性と統率力が優れている人のはずですが、もし自分にはそんな能力がないと悩んでいるのなら、とにかく地頭力を鍛えましょう。経験知を生かせるかどうかは、地頭のよし悪しに左右されます。そして、20代前半の部下がいる場合、あなたが彼らの「脳の3点セット」に影響を与える存在であることを自覚してください。「脳の3点セット」とは、前頭前野、頭頂連合野、側頭連合野のことです。冒頭で「脳の発達は25歳で終わる」とお話ししましたが、それは25歳未満の人はこの「3点セット」に未熟さが残っているということなのです。

前頭前野は、パソコンにたとえると様々なアプリケーションを動かすOS(オペレーティングシステム)。この前頭前野が発達途上で、かつ自分の目標に対する具体的な努力や行為がもっとも重要になる青年期(18~25歳)では、師や上司の指導がとても大きな意味を持つのです。

イノベーション力は若い人のほうが優れていることは明らかなので、組織のためにも、彼らのアイデアは積極的に取り入れましょう。ただし経験が少ないため、彼らの言うことには妄想が含まれています。それをあなたの地頭力でカバーするのです。

逆に、部下の立場で、上司とうまくいかないという悩みを持つ人も多いでしょう。そういう人は、「上司のせいで仕事がうまくいかない」「あの上司は馬鹿だ」と、誰かに愚痴るといいのです。人のせいにし、人の悪口を言うと、ドーパミンが出て快感になることがわかってきました。ただし、やりすぎると中毒になりますし、もちろん上司本人に言ってはいけません。攻撃されちゃいますからね。

人間性脳科学研究所所長、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部教授
澤口俊之

1959年、東京都生まれ。北海道大学理学部生物学科卒業。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。エール大学医学部研究員、北海道大学医学研究科教授などを経て、現職。専門は認知脳科学、霊長類学で前頭連合野を中心に研究。近著に『夢をかなえる脳』。
(構成=原賀真紀子)
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