本番に弱い、口下手、3日坊主……若い頃からの性質は変えられないと諦めてはいないか。人気の脳科学者が、誰でも、何歳からでもできる「自分を変える」法を伝授する。
能力や性格は40~80%が遺伝、残りは環境によって決まるという。しかも、人の脳は8歳までに急成長を遂げ、25歳でひととおり発達を終えてしまうという。だから、「大人は劇的には変われない」と脳科学者の澤口俊之先生は手厳しい。
しかし、落胆するのは早い。最近の研究では、大人になってからでも脳のニューロン(神経細胞)は増えるし、神経回路も発達することがわかっている。また、25歳を過ぎたあとは50代の終わりまで脳はさほど衰えないという。つまり還暦を迎える頃までは、努力と環境次第で脳機能を上げることは可能なのだ。
「なりたい自分」のイメージや具体的な目標を持つこと自体、脳を変える原動力になると澤口先生は指摘する。ただし、苦手や弱点を克服することばかりに気をとられていると、そこにネガティブな回路がつくられてしまうので、自分に厳しすぎるのは逆効果だという。
「適度に自分の能力を肯定しながら未来を志向する。それが大事です」
能力や性格と一口に言っても、変えやすいものとそうでないものがあり、それぞれに合った脳の鍛え方があるという。澤口先生に詳しく解説していただこう。
まず、みなさんが変えたいと願うことの中身は、脳科学の見地に立つと「簡単に変えうるもの」と「変えにくいもの」に分けて考えなくてはなりません。これらは、「遺伝と根強い関連があるかどうか」によって分類されます。たとえば個人の思想は遺伝とはあまり関係ありませんから、「簡単に変えうるもの」の最たるものです。