引っ越しや転職、留学などによって環境ががらりと変化したり、わが子の誕生などで大きく感情が揺さぶられたりすると、脳は変わります。しかし、そこまで思い切ったことをしなくても、脳を変えうる情動体験は身近につくり出すことができます。たとえば、とてもいいのが山登り。花が一面に広がる天国のような風景が目に飛び込んできたりして、非日常を味わうことができるからです。ただし、絶叫マシーンなどで味わう興奮は、脳を変えるような情動体験ではありません。

「簡単に変えうるもの」には語学力もあります。幼少期に人との会話をまったくせずに育ったなどの特異な事情がないかぎり、言葉は誰でも話せるようになります。外国語に関していえば、聞き取る力には遺伝による差があると考えられますが、脳は環境によって変化します。習得したい言語をたくさん聞けば、誰でもある程度は上達します。

【悩み】英語学習、ダイエット……どれも長続きしません
【処方箋】
挫折した過去を後悔せずに、失敗の原因を分析しましょう

問題は学習が長続きするかどうかですが、成功のかぎは「自己モニタリング力」の強化につきます。これは自分の特性を分析し、適切な方法などを見極める能力です。ダイエットも同じで、自己モニタリング力が高い人は成功します。以前語学やダイエットで挫折した人は、単に過去を後悔するのではなく、失敗の原因を分析しましょう。後悔をバネにできるのは、脳がまだ発達途上の24歳までです。25歳を過ぎた大人は、物事の過程や原因を分析しないかぎり、成長できません。

人間性脳科学研究所所長、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部教授
澤口俊之

1959年、東京都生まれ。北海道大学理学部生物学科卒業。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。エール大学医学部研究員、北海道大学医学研究科教授などを経て、現職。専門は認知脳科学、霊長類学で前頭連合野を中心に研究。近著に『夢をかなえる脳』。
(構成=原賀真紀子)
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