勝ち続ける人とはどんな性格の持ち主だろうか。脳科学の権威である林成之教授は、「豊かな情緒を持って全力投球する人は、高いパフォーマンスを発揮している」という。効率重視の人は、結局、結果を出せない。まずは本能を自覚するところから始めよう。
林 成之●日本大学大学院 総合科学研究科 教授。1939年生まれ。日本大学医学部、同大学院医学研究科博士課程修了。米マイアミ大学や日本大学医学部などで救命救急に携わる。2006年より現職。『脳に悪い7つの習慣』『ビジネス〈勝負脳〉』など著書多数。

脳は正直である。そして、脳をだますことはできない。それゆえ、学習効果を高めたいと思ったら、脳の持つ本能やクセを熟知することが必要になる。脳が嫌がる方法、脳のクセに合わない方法でいくら勉強を重ねても、成果が出なくなってしまうからである。

脳には、危機に対して興味を持ち、理解し、自分の気持ちから、考えを生み出す神経回路が存在する。神経活動の情報がこの回路をぐるぐる回ることによって、気持ちや新しい考えが生まれるので、回路の連合神経体を「ダイナミック・センターコア」と呼んでいる。

このため、危機を感じる扁桃核(へんとうかく)では「自分を守りたい」、情報を判断する前頭前野(ぜんとうぜんや)では「統一・一貫性」、欲望を司る自己報酬神経群(じこほうしゅうしんけいぐん)では「自分でやりたい」という組織由来の本能が生まれる。それと同時に、そこに存在する何億もの神経細胞も、周囲の細胞から情報を集める機能を持っているので、そこから「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」という神経細胞由来の本能を生み出す。