女性は、安全性と快適性に対する要求も厳しい。

阪口さんによれば、男性の多くが「オレは絶対事故らない」という根拠のない自信を持っているのに対し、女性の多くが「車幅の狭い軽は横から追突されると弱い」という不安感を持っているという。快適性では、男性がステアリングのグリップ感やメーター類のデザインを気にするのに対し、女性は長時間肌に触れるシートの質を気にする。

この2点に関して、特にN-ONEではサイドカーテンエアバッグやアレルゲンを除去するアレルクリーンシートの標準装備によって、根本的な解決を図っている。こうした「本質的な要求に対する真正面からの回答」こそ、女性の心をとらえている最大の理由だろう。逆に言えば、男が考える「女性向け」の多くは、おためごかしにすぎないということだ。

男女の志向の違いという点で、最も興味深いのが車体色の好みだ。

Nシリーズは車種によってカラーリングのコンセプトを変えており、最もカラーバリエーションの多いN-ONEは、ツートンカラーも含めて16色のバリエーションを持つ。そのうち、男性は黒、白、シルバーといった基本色を好むのに対して、特に20~30代の女性は赤、青、黄色といった派手な色を好む傾向が強いというのである。

ちなみにN-ONEのカラーバリエーションは「元気色」「大人色」「基本色」に分類されており、赤と黄色は元気色、青は大人色に属する。

「この結果を見ても、女性が車選びで強い自己主張を始めているのに対して、男性が保守化しているのは明白です」

N-ONEは往年の名車N360をモチーフにしている。真っ赤なボディーに純白のストライプが入ったド派手なN360を乗り回していたのは、まぎれもなく当時の「若い男」だったはず。

強烈な自己主張を持った若い女性が、かわいい男を助手席に乗せて得意気に街を流す時代が、もうすぐそこまできている。

(小倉和徳=撮影)
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