「身内の事件」に対する苦々しい思い
筆者は大学卒業後、警視庁に入庁し、警察官として5年間ほど勤めた。退職後は広告系企業を経て、現在はフリーライターとして活動しているが、20代の若い時期を過ごした警察の組織には今でも懐かしさと敬意を抱いている。
なので、たびたび世を騒がせる警察官の不祥事報道を、いつも苦々しい思いで見ている。「ほとんどの警察官は真面目に頑張っている」というのは筆者が知る限りでも事実で、ごく一部の逸脱が職業そのものの信用を損なわせる事態はどうにもやるせない。
先日、大阪府警の警視(53)が10代女性への不同意わいせつの疑いで逮捕された。SNSでの「パパ活」を通じて知り合った16歳未満の女性の体をカラオケ店で触るなどしたという。
警視は違法風俗店などを取り締まる生活安全特別捜査隊のナンバー3にあたる特別捜査官で、青少年の犯罪被害抑止を担当する生活安全部に属していた。つまり、自らが取り締まるべき犯罪を犯したわけで、まったくもってひどい話だ。被害者が未成年であったことや、多くの部下を指導監督する立場だったことを鑑みても、同情の余地はない。
犯行の手口は意外なほど手が込んでいない
逮捕時にはテレビニュースで連行される警視の映像が流れた。後部座席の両脇を捜査員に挟まれ、肩をすぼめてうつむく姿を何度もカメラのフラッシュが照らしていた。おそらく被疑者を連行する側として、似たシチュエーションを経験したことがあっただろう。一転して、自らの顔に無数のカメラが向けられる状況に何を思ったのか。想像すると、あまりにもみじめだ。
社会的な地位や信用、その他数えきれないリスクを負ってまで、警視はなぜ罪を犯したのか。
「売買春事件の捜査を担当していたのだから、足がつかない手段を知っていたのではないか」と疑う読者もいるかもしれないが、おそらくそれは違う。報道によれば、警視の犯行は、家族に行方不明者届を出された被害少女が、警察に保護されたことがきっかけで発覚したという。
SNSでのやりとりの履歴は、被害少女のスマホにまず間違いなく残っている。16歳未満の少女がパパ活を続けていれば、警察に補導や保護をされる確率は高い。いろいろと聴取されるなかで、犯行が露見する可能性は十分にある。犯行の場所も入退場の記録がしっかりと残っていた。防犯カメラも多いカラオケ店だ。
警視の犯行はまったく手が込んでいない。事実、事件は今年6月下旬に発生していて、たった2カ月ほどで逮捕されている。何の不安もなかったとは考えづらい。それでも犯行に及んだのか。犯罪心理学者の出口保行氏に聞いた。


