安倍晋三首相が掲げる「アベノミクス」を成功に導くにはアベノミクスが掲げる「三本の矢」の1つである「成長戦略」が不可欠である。産業競争力会議の「論客」が、日本復活の“秘策”を語った。
新浪剛史
株式会社ローソン代表取締役CEO

【田原】ローソンのライバルであるイオンが全管理職の半分を女性にすると、最近の新聞に出ていました。ローソンは、いま女性に対して、どのような対応をしようとしているのですか。

【新浪】組織全体における人数を増やして女性の比率を高めないと、管理職になる人の数も増えないので、新しく入ってくる社員の5割以上を女性にしています。私は女性を“えこひいき”してもいいと思っているのです。ローソンのお客様といえばこれまでは男性が多数でしたが、女性のお客様をもっと増やしたい。そのためには男性だけでなく、女性の着眼点が必要になるので、社内の女性の人口密度を高めています。

【田原】日本の一部上場企業で、女性役員は1%以下です。欧米の十数%に比べて女性役員の数が少なすぎるといわれていますが、ローソンはどうですか。

【新浪】私たちは取締役が7人で、その中で社内の取締役が3人、社外の取締役が4人います。社外の取締役4人のうち2人が女性です。取締役7人中2人が女性というのは、日本の中では比率として高いでしょう。女性の役員は非常にいいです。男性はいつも聞く側になってしまうほどパワーがあります。

【田原】アベノミクスで、安倍晋三首相が、女性の育児休暇を3年にすると言っています。ローソンはどうですか。

【新浪】3年間の育児休暇は、もう1992年から導入しています。育児休暇3年に対する問題点もすでに浮き彫りになっていて、解決に向けた新制度もつくりました。

【田原】早い時期から導入しているのですね。どういう問題が起きたのですか。

【新浪】育児休暇を取得した社員の多くが復帰に躊躇していたのです。ビジネスの現場から1度離れると、気持ちとしてなかなか帰ることができなくなっていました。そのため、育休中も会社から完全に離れてしまわないように、プロの主婦として、スーパーなどでの買い物レポートを出してもらう仕組みをつくりました。これで育休中も“凧の糸が切れずに”会社とつながりを持ってもらうのです。

【田原】レポートを書かせると、みなさん、戻ってきますか?

【新浪】ええ、いまは100%復帰しています。ただレポートだけではなく、ママさんたちが集まるセクションをつくったのです。復帰後、半年から1年間、そのセクションでは、プロの主婦である彼女たちを“よりプロ化”して、商品を見てもらいます。仕事に慣れてもらった後は、最前線のセクション、場合によっては、マーケティングや商品開発に行っていただく場合もあります。会社にいるとお客様視点から売り手の意識になってしまいがちなので、フレッシュな市場の感性を持つプロのお母さんは貴重なんです。

【田原】プロの売り手では、ダメですか。

【新浪】ものをつくったら、どうしても「これを売らなければ」という発想になりがちです。育児休暇は、売る側から買う側に意識を変えられる、いいタイミングです。もちろん3年待たずに働きたい人は働いてもらえばいいし、それはそれぞれでいいと思います。