【田原】僕はどうも、村上さんは稲盛さんになっていく気がするな。稲盛さんは事業に飽きて、宗教のほうにいっちゃった。村上さんも早くから事業をやっているし、そのうち飽きちゃって宗教にいくんじゃないかな。

【村上】何をもって宗教とするかですが、私はやっぱり事業をやりたいですね。

【田原】稲盛哲学というけど、哲学は論理で、宗教は人間、カリスマです。稲盛さんはカリスマだから宗教です。

【村上】稲盛さんの理念には共感しますが、ほかにも孫正義さんの挑戦し続ける姿勢とか、永守重信さんのハードワークとか、名経営者と呼ばれる先輩たちを尊敬する要素はいろいろあります。

【田原】そうですか。村上さんという経営者がこれからどのように成長していくのか、楽しみにしています。

田原総一朗が見た村上太一の素顔

その昔、リクルート創業者の江副浩正さんは求人情報ばかりの雑誌をつくった。それまで求人情報は記事のついでに新聞や雑誌に掲載されるものだったが、逆転の発想で、求人広告のほうを中心に持ってきた。これには当時、多くの人が驚いた。

ところが村上さんはリクルートの向こうを張って、さらなる新しい求人ビジネスを定着させようとしている。従来は求人広告を出した時点でお金がかかるが、村上さんは成功報酬型の料金体系にして、リクルートにお金を払う余裕のない飲食店などを取り込んでいる。この発想に、天国にいる江副さんも舌を巻いていることだろう。村上さん率いるリブセンスが、どこまでリクルートに迫れるのか。注目したい。

リブセンス社長 村上太一
1986年、東京都生まれ。早稲田大学高等学院、早稲田大学政治経済学部卒業。大学在学中の2006年にリブセンス設立。アルバイト求人サイト「ジョブセンス」をはじめとしたインターネットメディアを運営。11年12月に東証マザーズ、12年10月には東証1部へ上場。ともに史上最年少記録を更新した。
田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。活字と放送の両メディアで評論活動を続けている。『塀の上を走れ』『人を惹きつける新しいリーダーの条件』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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