頭のいい人は、話が簡潔だ。なぜそんなことができるのか。『1分で話せ』の伊藤羊一氏は「相手の期待を把握する必要がある」という。コミュニケーションの生産性を変える「聞く技術」とは――。

Technique①「ピラミッド」のピースを埋めるように質問する

結論・根拠・具体例の3つの箱に入れていく

なぜ私たちは職場で話をするのでしょうか。それは、相手の目的を聞き出すためです。

私は『1分で話せ』という本を書いています。発行部数が67万部を超えるベストセラー。「話せ」というタイトルから「話し方」が重要なのだと誤解されるのですが、実は仕事においては「どう聞くか」も同じくらい重要です。相手の話をちゃんと聞けないと、自分が何をすればいいのか、自分に何を期待されているのか、わからなくなってしまうからです。

それでは仕事において、どのように話を聞けば、相手の目的を把握し、成果を出すことができるのか。3つの「聞き方のテクニック」を紹介しましょう。

仕事における会話は、「ピラミッドの形」をしています。てっぺんにくるのは結論です。ビジネスというのはゴールに向けて物事や人を動かすことですから、必ず結論があります。

結論には必ず根拠があります。「製品の売り上げ増が期待できるから」「低いコストで実施できるからリスクもない」「新しい層にアプローチできて、会社の未来に繋がるから」というように、ひとつの結論に対して根拠は複数あることが理想的です。

根拠の目安はオーソドックスですが、3つでしょう。それより多いと話が長くなりすぎてしまうし、少ないと論破されたり反対されたりしたらすぐに主張の正当性がなくなってしまい、心許ないからです。

根拠を下から補助的に支えるのが具体例です。人は物事を具体的にイメージできてはじめて、「あ、そういうことね」と理解しますから。「今回は○○円の売り上げ増加が見込まれるという試算が出た」「他の製品で似たイベントを開催したときは、実際に売り上げが△△%増加した」と、ひとつの根拠に対して、最低でもひとつは、「たとえば」の話をします。あまり具体例を挙げすぎると何がなんだかわからなくなってしまうので、ひとつの根拠に3つ以上の具体例を挙げるのはやめましょう。

この「結論―根拠―具体例」の末広がりの三角形を、聞き手と話し手の間でやりとりするのが、ビジネスにおけるコミュニケーションの基本形です。ピラミッドの思考法をしっかり身につければ、自分が話すときはもちろん、相手の話を聞く際にも役立ちます。

つまり、プレゼンテーションを聞いたり商談に臨んだりするときは、頭の中にピラミッドを描いて、「あ、この人の結論はこれだな」「なるほど、1個目の根拠はそれね、2個目は何かな」「具体例が来たぞ」というように、ピラミッドのピースをひとつずつ埋めていくイメージで話を追っていくのです。こうすることで、相手の考えていることが論理的に理解できるようになります。

まとまっていない思考を質問で言葉にしてあげる

仕事で誰かと話す際は、相手が結論を回避しようとしている可能性を頭に入れて話を聞くといいでしょう。実際の仕事の現場では、あえて結論を出したがらないというケースが、意外と多い。結論を決めるということは自分の立ち位置を決めるということであり、自分が下した結論がその場で否定されたり結果的に間違いだったと後から判明したりするリスクが伴うからです。