判例は1970年代に定着し、解雇裁判の指標になっているが、こうした規制がリストラの足枷になっている。長谷川ペーパーはこの規制を覆す大胆な変革を求めている。まず、現行の労働契約法16条、解雇権濫用法理の規定を削除する。新たに民法627条の「解雇自由の原則」の規定を盛り込み、どういう場合に解雇を禁止するのか、解雇の際に労働者にどういう配慮をするかという規定を明文化して設けるべきだという。
つまり、現行の労働契約法は「合理的理由のない解雇はできませんよ」と言っているが、最初に「解雇は自由です」と、前提をひっくり返して、例外的なケースについて解雇を禁止しようというものだ。これは日本と同様に社会的正当性のない解雇を禁止するヨーロッパ諸国と異なり、差別的解雇以外は原則自由とするアメリカ型に近い。では経営者は解雇規制のどこに不満を持っているのか。ローソンの新浪剛史社長は、3月15日の産業競争力会議でこう発言。
「とくに被解雇者選考基準が大事。たとえば、勤務態度が著しく悪く、または結果を著しく出せていない社員は他の社員に迷惑をかけていることを十分認識しなくてはいけない。一方で、企業として教育や研修の機会を付与したのかも考慮する。それらを解雇選定基準に入れ、柔軟に解釈すべき。解釈においては、解雇法理そのものよりも、組織全体で迷惑をかけている人に対して解雇が会社として検討しやすくなる柔軟な要件を入れるなど、ぜひ今後検討していただきたい」(議事要旨より)
経営者として言いたいことはよくわかる。ただし「勤務態度が著しく悪く、結果を出せていない社員」や「組織に迷惑をかけている人」というのは、それこそ労使双方の立場で言い分が異なる抽象的な見方にすぎない。だからこそ裁判などで客観的かつ合理的な検証が必要になる。