事実、労働契約法16条を毛嫌いしている規制改革会議のメンバーもいる。内閣府の寺田稔副大臣は、雇用ワーキング・グループの会議でこう発言している。

「今の労働契約法16条というのは、ある意味でフレキシビリティを奪っている規定だと思います。(中略)ジョブ型などを増やすためにもガイドラインをつくるなりの対応がいるのかもしれません。もちろん、今の4要件も今の判例ではかなり弾力的に解釈されている部分もあると思いますが、当然、労働基本権があるわけですから、雇用契約を結ぶ世界においては、16条の保護ないし過度の硬直的運用はソーシャルモビリティを失う恐れがあると思います」(第2回議事概要)

労働契約法の改正の意図が透けて見えるようだ。山井議員は「最大の問題は働く側の代表である労働組合を入れずに、経営者と有識者だけで進めていることです。国会で安倍総理に問い質しても、最後は労働側委員も入る厚労省の審議会でやるからと言うだけ。しかし、いったん決まった内閣の方向性を変えられるわけがありません」と指摘する。

仮に法改正されると、給与の引き下げや雇用保障をしなくてもよいというメリットが生まれるだけではない。たとえば、人事評価の低い社員に対して、リストラされるよりはましだろうと、限定正社員になるように迫るなど悪用する企業も出てくるかもしれない。山井議員も「金銭解決と限定正社員の行き着く先は、正社員もクビにできるんだという風潮になってしまう。そうなると事実上、1億総非正規社員化という状況になる」と警鐘を鳴らす。

有識者会議の雇用改革案は成長戦略にのるものは少なかったが、参院選挙後に再び議論される公算が強い。サラリーマンの身分と生活に関わるだけに、円安・株高に浮かれている場合ではない。

(宇佐見利明、PANA=写真)
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