長谷川ペーパーではもう1つ重要な提起をしている。重点施策として「再就職支援金、最終的な金銭解決を含め、解雇の手続きを労働契約法で明確に規定する」として、具体的には「再就職支援金の支払いとセットでの解雇などを含め、合理的な解雇ルールを明文化で規定」することを求めている。裁判で解雇が不当か正当かを争う前に、会社が再就職支援金などのお金を労働者に支払えば解雇できるようにせよ、というものだ。

(PANA=写真)

だが、この提案は安倍総理に否定された。3月下旬の衆院予算委員会で総理は「金銭解決や解雇の自由化という考え方はない」と発言。ところが4月2日の衆院予算委員会では「金銭を払えば解雇できる事前型の制度は一切考えていない。(裁判で)解雇無効となった場合に、事後的に金銭を支払って労働契約を解消する制度は含めていない」と答弁を修正。

つまり、金を払えば解雇できる事前型は認めないが、事後型の金銭解決制度の導入には含みを持たせた。現行の法制度では従業員が解雇された場合、解雇不当を理由に提訴し、解雇無効の判決が下れば「現職復帰」しか道はない。

しかし、実際には職場復帰しにくいことから和解で一定の金銭を受け取って辞めるケースが多い。事後型の金銭解決制度とは無効判決が出た後、金銭基準に従って労働者にお金を支払うことで雇用契約を解消することができる仕組みだ。

実は事後型の金銭解決制度は産業競争力会議と並ぶ前出の規制改革会議の雇用ワーキング・グループで検討されている。同じような金銭解決制度は2007年の労働契約法制定時に議論されたことがある。だが、職場復帰ができなくなると労働側の反発や労働者に支払う金銭の水準が高いと困るという中小企業経営者の反対によって外された経緯がある。

この制度について日本労働弁護団の鴨田哲郎弁護士はこう指摘する。

「解雇無効になった場合、労働者が復職したくないという代償として金銭を支払うことは選択肢の1つとしてあってもいいが、使用者の請求権を認めることには反対だ。解雇を金で買う制度であり、労働者の現職復帰の道を閉ざすものだ」