中学受験が過熱している。親はどんなことに気をつけるべきか。塾講師で教育コンサルタントの渋田隆之さんは「ネット上には情報が溢れ、フリマサイトでは“塾の模試”や“入塾テスト”の過去問が取引されている。狙いが明確であれば活用価値はある。だが、“偏差値をあげたい”、“上位クラスに入りたい”といった目的が見受けられ、本末転倒だ」という――。
試験を受ける学生の手元
写真=iStock.com/smolaw11
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「高偏差値」「上位クラス」が目的になると本末転倒

各地で講演会を行っていると、終わった後に、保護者の皆さんから次のような質問を受けることがあります。

「塾の模試対策として、過去問をメルカリなどで購入する親がいると聞きますが、どう思いますか?」
「過去問を購入した家庭の子どもと一緒に模試を受けたら、うちの子が不利になるのではないですか?」

「志望校」の過去問ではなく、「塾の模試」の過去問を買う意味はあるのか、という質問です。信じられないと感じる方もいらっしゃると思いますが、メルカリなどで実際に過去問がそこそこ良い値段で売られていたりするので、数は少ないとは思いますが事実です。Xを見ても、塾の模試や入塾テスト、組分けテストなどの“過去問”について触れている投稿があります。

確かに、過去のテスト問題を解いておくことで点数が取りやすくなるケースもあります。まれに前年と同じような出題だった場合は、偏差値は跳ね上がります。そのような質問にこられる親御さんの目的は、ほとんどが「わが子に少しでも高い偏差値を取ってもらうため」「わが子を、塾でレベルの高いクラスに入れるため」であると見ています。

しかし、よく考えてみれば本末転倒です。たまたま取った高い偏差値は本来の実力が反映されているとは限りません。また、基礎を固めた方が良い段階なのに実力以上のクラスに入ってしまえば、授業についていけなくなる可能性も十分にあるからです。私は、このような対策を「ドーピング学習」として説明しています。実際にお子さんの学力・得点力が上がっているわけではないので弊害のほうが大きいと断言できます。

“模試の成績”で評価される構造もある

また、同じようなケースとして「塾の○○先生のほうが、模試対策をしてくるので助かる。その先生のクラスに入りたい」という相談も受けます。

ちなみに塾講師は、教え子の模試の結果で会社から評価されがちです。加えて、そのクラスや教室の模試成績が良くないと保護者からのクレームも来てしまいます。本来ならば、もう少しゆっくりと学力の定着を図りたいと思っても、模試対策に力を入れてしまうという構造的な理由があることもおさえておきます。

話は戻りますが、そもそも、中学受験の目的は志望校に合格することです。模試結果をあげ、上位クラスに上がれば最終目的を達成する、ということは絶対にないでしょう。冷静に考えれば分かるはずですが、なぜこんなことが起きてしまうのでしょうか。

それは、受験生の親をめぐる不安が増大していることも関係していると見ています。