最近、高齢ドライバーの引き起こす交通事故がたびたび報じられた。高齢者からは免許を取り上げたほうがいいのだろうか。統計データ分析家の本川裕氏は「死亡交通事故率を調べると、75歳以上の減少幅はほかの世代よりも大きい、高齢ドライバーの事故はむしろ激減している」という——。

高齢者の事故が増える以上に、高齢者が増えている

歩行者を巻き込んで高齢ドライバーが引き起こした痛ましい死亡事故が大きく報道され、運転能力の衰えた高齢者が引き起こす交通事故が増える一方であるという印象を国民は抱いていると思う。自らの運転能力を過信して免許を返上せず深刻な事故を引き起こす高齢者の身勝手さを非難する声も大きくなっている。

まず、この点に関して統計データは何を語っているかを見ていこう。本当に高齢者は身勝手なのであろうか。

警察庁はドライバーの年齢別の死亡交通事故の件数を公表している。この10年間の変化を図表1で追った。最初のグラフは死亡事故の件数の実数変化だ。65歳以上の高齢ドライバーの死亡交通事故の件数自体はあまり変わっていないが、それより若い非高齢者(65歳未満)の事故件数が急減していることが分かる。

このために、年齢別に事故件数のシェア割合の変化を示した下の図を見ると、65歳以上の高齢者の死亡交通事故の割合がいずれの5歳きざみにおいても上昇していることが分かる。これが高齢ドライバーの引き起こす交通事故が増えている印象をもたらす大きな理由であることは間違いなかろう。