女性活用の鍵を握る「限定正社員」

そこでいま、規制改革会議で議論しているのが「限定正社員」の雇用ルール整備です。限定正社員とは職務、勤務地、労働時間のいずれかが限定されているという要素を持つ正社員を指します。

これらの要素が限定されれば、キャリアの将来展望を描きやすくなります。たとえば、勤務地や労働時間が限定されれば仕事と育児、介護を両立できるファミリー・フレンドリーな働き方やワーク・ライフ・バランスが実現しやすくなるでしょう。そうなれば女性の積極的な活用もしやすくなります。

非正規雇用の正規雇用への転換についても、限定正社員を導入すると解決しやすくなります。非正規社員が正社員になりたいのは雇用の安定性、すなわち無期雇用がポイントですが、みんなが無限定型で働きたいわけではない。転勤や残業はできないからという理由で、パートで働いている人はその典型でしょう。そうした人たちの要望に応えるには限定型正社員をつくったほうが転換しやすく、雇用の安定化を進められます。

強調しておきたいのは、入社したときと同じ型で退職までいる必要はないという点です。たとえば無限定型で入社した人が子育て期には限定型に転換し、子育てが一段落したら再び無限定型に戻るというように。そうすれば1つの会社のなかで、多様な働き方が実現できるようになります。

限定正社員が導入されると企業が本人の希望の有無にかかわらず、無限定正社員を限定型に転換させて解雇しやすくするのではないか。そんな懸念を述べる人もいますが、働き方の形態を変更するときに労働者の合意が必要であることはいうまでもありません。

従来の日本の働き方は無限定型正社員と非正規雇用に二極化し、その間の働き方がありませんでした。それをつくろうというのが限定型正社員で、導入されると多様な雇用形態が生まれます。働き手の数、労働力率が上がり、女性や高齢者も就業しやすくなり、ダイバーシティも進んでいくでしょう。