無限定型正社員が必要なくなると言っているのではありません。企業のコア人材として一定の割合の無限定型は必要ですが、現在は正社員がみんなそうなってしまっています。そのバランスを修正していこうということです。
非正規雇用についても、雇用者全体に占める割合が35.2%(平成24年労働力調査)で、この割合は世界でも高い水準にあります。労働者が無期雇用を前提とした多様な働き方を選べることは雇用の安定につながり、ひいてはそれが社会の安定につながります。
エリートの早期選抜が加速
限定型正社員が定着していくと、アメリカ企業でエリートに位置づけられた社員が一気に幹部へ駆け上がっていくように、「無限定正社員=エリート」という色彩が強まっていくと思います。
日本企業ではこれまで「誰でも社長になれる可能性がある」という一種の幻想を抱かせて、社員を働かせてきました。みんな社長になれると思って猛烈に、家庭を犠牲にして働くことは活力になった側面もありますが、果たしてこれからもそれでよいのか。むしろ早い段階からトップエリートとそうでない人を分け、個人の価値観に従いそれぞれの幸福を目指す働き方をしたほうがよいのではないか。
その意味で限定正社員の導入は、「あなたはどんな生き方、働き方をしたいのか」という問いを投げかけるものでもあります。
(構成=宮内 健)