一方で語学力に関しては、TOEIC730点以上、もしくは会話能力を計るTSSTのレベル5以上を研修期間の必達目標にしている。
また、研修期間中に現在の仕事を外し、責任の重い業務に配置して鍛えることもやっている。異動の権限は事業グループ長が持つが、ストレッチ認定者は帝人本体のCEOが人事権を持つ。
「重点戦略事業に優秀な人材を配置し、鍛え、成果を出させることは非常に大事です。認定者の戦略的育成で重視しているのは、海外でのビジネスの経験を積ませること、複数の事業を経験させること、そして営業にとどまらず、管理部門など複数の機能を経験させること。この3つの経験をしているかどうかを確認し、配置を実施しています」(酒井部長)
ストレッチの受講者は現在約120人。同社の中核事業会社の課長クラス以上の約15%に当たる。もちろん、認定されなくても昇進は可能であるが、経営リテラシーの教育と配置による事業経験の厚みを考えても認定者が有利であることは間違いないだろう。
気になるのは選抜から漏れる社員である。キリンは不合格となった社員はその理由をフィードバックし、再チャレンジも可能である。しかし「隔年での実施であるうえ、年齢要件もあり、何回も受けられるというわけではない」(三好部長)という。
帝人は「本人は当然、選ばれていることは知っているが、周囲に対しては誰が選ばれているかを積極的にオープンにしていない」(酒井部長)と配慮を示す。
優秀な若手人材を集中的に育成し、人材競争力を高めることが企業の喫緊の課題になっている。今後、役員に限らず、その前の部長、課長の若返りも一層進む可能性がある。