誰もがもつ専門性をストーリーに生かす

仕事をしていく上で、誰でも専門分野や得意なジャンルはお持ちだろう。経理でも営業でも、電卓の叩き方から書類の整理方法まで「自分にとってはただの単調な業務」でも、分野や所属が違う人間にとっては驚くような“技”や“興味深いエピソード”などが隠れているかもしれない。まずは自分の専門分野の中で、人が興味を示すポイントを探し、それを実体験として話に盛り込み、「先が知りたくなる」ストーリーに仕立てて伝えてみよう。

たとえば、知人が途上国支援(ODA)で、モンゴルの遊牧民に向けて郵便施設をつくっている、という話を聞いたことがある。草原を移動する生活で住所が定まらない遊牧民を相手に、どうやって住所を特定するのか? という疑問がわいてこないだろうか。

知人によると、まずは住民の居場所を把握するために、GPS衛星で人の居場所を特定するシステムの案が出たという。けれども、草原の中では電力供給は不安定だし、果たして正確な把握ができるのか、インフラ、経費ほかさまざまな問題が考えられる。専門チームが最先端の技術を模索していった……が、結局は、私書箱を用意して遊牧民が自分で取りに来る、というオチになったそうだ。

本来なら高度な技術を使った真剣な話ながら、ここでは実体験を交えてストーリーに乗せて語られたため、ドキュメンタリに少し笑いの要素を加えたかのように興味深かった。話し手の専門分野で、実体験を交えた話ほどおもしろいものはない。自分の中に眠っている専門分野に絡めた経験を呼び覚まして、商談やプレゼンでのつかみから本題にまで、広く生かしてみよう。それも、わかりやすくストーリーに乗せて語られていれば、どんなに専門性が高い話でも聞き手は先が知りたくなり、エンターテインメント性すら帯びて、あなたの話に引き込まれていくこと請け合いだ。

関連記事
ストレスなく働くための秘訣
脳科学が実証! 笑わせ上手は稼ぎ上手
発想のヒントはビジネスから遠い分野にある ~サイエンス9冊
<脳の新科学>走ればボケ防止&頭がよくなる【1】
苦手を得意に変える1万時間の法則